The Dance Times

『百年の孤独』の作者ガブリエル・ガルシア マルケスの短編『マコンドに降る雨を見たイザベルの独白』を基にしたテキストの朗読（佐東利穂子）が流れる中、パフォーマンスが行われた。出演は、勅使川原三郎、佐東利穂子、鰐川枝里、加藤梨花。

降り止まない雨。もはや住む人の耳に雨音は聞こえず、庭に来た犬（原作では雌牛）は泥に脚を埋めたまま息耐え、父もいなくなってしまった。そして世界の全てが止まった。

絶望的な暗さ。勅使川原が踊る。そこに突然、サラ・ヴォーンの『ラヴァーズ・コンチェルト』が流れた。思いがけない救いに涙が止まらなくなってしまった。奇っ怪な程に恍惚として、秀逸なソロだった。年末だけに、フランスで起きたテロやら、安保法案の強行採決やら、昨年の暗いニュースを反芻していたところに来て、それらの憂さを払拭してくれる強さもあった。

目を覚ますと、私は死んでいた。降り続いた雨は止んでいた。
なんて爽快な最後だろう。

（吉田 香 2015/12/06 16:00 シアターχ）