October 07, 2012

東京バレエ団『オネーギン』30日

シュツットガルト・バレエ団から男性二名が客演した。オネーギンは、6月の同団来日公演で『白鳥の湖』に主演したエヴァン・マッキー。長身で手足が長く、オネーギンの黒い衣装がよく似合う。タチヤーナの吉岡美佳と踊った二つのパ・ド・ドゥは、サポートに不安がなく、身長を生かしたリフトはダイナミックで、スピード感もあった。一つ一つの場面はポーズが美しく絵になる。決闘の場で、連続して行うピルエットは、合間に両手で股を打つ音が客席に響き、感情の高ぶりが強く表現された。しかし演技がシーンごとに完結しているようにも思われ、物語の流れに合わせた変化には若干の物足りなさがあった。オネーギンの屈折した人物像が、もっと現れても良かったのではないだろうか。吉岡は初演時よりも心の揺れが見られ、ドラマ性が高まった。ゲストダンサーと共演する際も、パートナーへの親しみが感じられる。レンスキーは、予定されていたマライン・ラドメーカーが病気で降板し、アレクサンドル・ザイツェフが出演した。恋で身を滅ぼす若さや情熱は控えめだが、決闘の前のソロは、情感の配分のバランスが良く、よりレンスキーの絶望が伝わった。オリガに小出領子、グレーミンに高岸直樹。初演時に気になった、群舞の場面の空間の「空き」が解消された。ひょっとするとセットの配置に工夫があったのかもしれないが、個々のダンサーが前回以上に自己主張して、より自由に動いた結果のようにも思われる。(森本ゆふ 2012/09/30 15:00 東京文化会館大ホール)

outofnice at 18:42短評 
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