September 11, 2012

石神井バレエ・アカデミー創立30周年記念公演《バレエ・ラビリンス》

外崎芳昭・山崎敬子が主宰する石神井バレエ・アカデミーの創立30周年を記念する公演が行われた。総タイトルの《バレエ・ラビリンス》には、彼らがバレエの迷路に踏み込んで進むべき道をけんめいに探し求めていることを暗示する意味が込められていたと思う。
 第1部、第1場は「バロック」と名付けられていて、バロック・ダンスの市瀬陽子の指導による昔のステップに、山崎敏子がバレエ的に手を加えた6本が並んでいた。17〜8世紀に踊られたダンスは、今のクラシック・バレエのステップと遠くでつながっている。これは、その類似するところを探りあてようとするけんめいの試みだったと思う。
 第1部、第2場は「ロマンティックからコンテンポラリー」で、ロマンティック・バレエの『ラ・シルフィード』のパ・ド・ドゥなどからコンテンポラリーの『For You』に至る5作品が並んだ。
 『For You』は、『眠れる森の美女』のプロローグで妖精たちが誕生したオーロラ姫にお祝いの品を贈るパ・ド・シスの曲を使った6人の女性の踊りだ。バレエのステップの中にたくみにコンテンポラリー風の動きを混ぜ込んで作った、モダンな感覚のアブストラクト作品だが、妖精らしいしぐさがさり気なく織り込まれていて、元のシーンを想像できるおもしろさがある。
 そして第2部の『眠れる森の美女』第3幕となるのだが、ここで『For You』を先に上演した意味が生きてくる。第2部にはリラの精などの妖精は出てこないのだ。オーロラ姫=宮城文、デジーレ王子=斎藤拓の谷桃子バレエ団コンビを起用して芯を固め、にぎやかにディヴェルティスマンを披露した。
 練馬文化センターの小ホールを使って『眠れる森の美女』をやることの無謀さを、大ベテランの外崎芳昭、山崎敏子が知らないわけはない。彼らはそれを承知で、バレエ以前のバロックの世界につながる道へと踏み込んで行ったのだろう。かつて東勇作らが探求した遠い世界を、今また思い出させてくれた二人に感謝しよう。
(山野博大 2012/9/7 練馬文化センター小ホール)



emiko0703 at 09:20短評 
記事検索