舞台評

May 23, 2023

東京バレエ団が『ジゼル』を上演した。2021年2月にも上演されているので、比較的短いスパンでの再演である。前回2日目に登場した秋山 瑛と秋元康臣のペアが今回は初日を踊り、翌日と翌々日には、中島映理子と柄本 弾、足立真里亜と宮川新大が主演した。初日の様子を報告する。
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May 09, 2023

名作『夏の夜の夢』(フレデリック・アシュトン振付)と、世界初演の『マクベス』(ウィル・タケット振付)で構成されたプログラムが上演された。続きを読む

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May 03, 2023

2017年にスタートした《上野の森バレエホリデイ》も今年で7回目。コロナ禍でもオンライン配信を駆使してファンを取り込み、すっかりゴールデンウィークの恒例イベントとなった。今年のメインは、金森穣版『かぐや姫』第2幕、ロビンズの『イン・ザ・ナイト』、ノイマイヤーの『スプリング・アンド・フォール』で構成されたトリプル・ビル。『かぐや姫』は全三幕のグランド・バレエになることが発表されていて、2021年11月に初演された第1幕に続き、今回は第2幕が世界初演された。主演のかぐや姫と道児は前回と同様に秋山瑛と柄本弾、および足立真里亜と秋元康臣の組み合わせ。加えて今回、影姫(ダブルキャストで沖香菜子と金子仁美)と帝(同、大塚卓と池本祥真)が主要な役として登場した。二幕からは独創的な展開となり、休憩時間にはあらすじを一読するように促すアナウンスが流れていた。続きを読む

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March 12, 2023

ノイマイヤーは2024年に芸術監督退任を表明しているため、現体制では最後の来日公演である。続きを読む

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March 07, 2023

東京シティ・バレエ団が《トリプル・ビル2023》を上演。バランシン、フォーサイス、イリ・ブベニチェク振付の3作品が並んだ。バレエ団はかねてより、クラシック・バレエの技術を要求するコンテンポラリー作品に積極的に取り組んできたが、これまでに培った技量が生かされた、東京シティ・バレエ団らしいステージだった。
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February 18, 2023

3回公演の中日でありながら、東京文化会館は大入りで、1階には補助席が出る盛況ぶりであった。一曲目の『白鳥の湖』第2幕より は、王子役として出演を予定していたマルセロ・ゴメスが舞台稽古中の怪我で降板。柄本弾が代役で登場したが、長年パートナーを務めているだけあって息のあった踊りを見せた。幕が上がるとアダジオから始まる構成で、観客を一気に作品の世界に引き込む力は見事である。四羽、三羽、オデットのヴァリエーション、コーダと、2幕後半をすべて上演した。キリアンの『小さな死』は技術的な精密さが詩情に結びつく作品だ。剣、布、バロックドレスなどを使いこなすというタスクも多い。安全圏(comfort zone)を突き破るようなスリリングな踊りを見せた、中川美雪と生方隆之介のパ・ド・ドゥが印象に残った。

二幕はプティの二作品に上野が出演し、ゴメスとは『チーク・トゥ・チーク』で共演した。舞台中央にテーブルが置かれ、女性ダンサーはヒール付きの靴で踊る粋な作品で、芝居っ気たっぷりのゴメスもめっぽう上手い。もう一つのプティの作品は、二組の男女が登場する『シャブリエ・ダンス』。上野水香と柄本弾、政本絵美とブラウリオ・アルバレスが出演した。二作の間に挿入された『パキータ』より は涌田美紀と秋元康臣がプリンシパルとして出演。純クラシック作品をすっきりとまとめ、公演全体を引き締めた。

第三幕はベジャールの『ボレロ』。上野といえば日本人離れしたスタイルや、身体性の高さに注目が集まるダンサーだが、本作は出演すること自体がファンの期待に応えているという点で、踊り手と作品との関係性が、他の作品とは異なるのではないだろうか。東京バレエ団への電撃的な移籍から早19年。次年度からはゲスト・プリンシパルとして活動していくことが発表された。日本を代表するプリマ・バレリーナの舞台を、これからも観続けることができるであろう素晴らしいニュースである。

(隅田有 2023/02/11 14:00 東京文化会館大ホール)


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May 07, 2022

東京バレエ団がジョン・クランコ版『ロミオとジュリエット』をバレエ団として初演した。トリプルキャストで初日が沖 香菜子と柄本弾、二日目が足立真里亜と秋元康臣、最終日が秋山 瑛と池本祥真がそれぞれ主演した。5月1日の様子を報告する。
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November 07, 2021

金森穣振付の『かぐや姫』は全3幕のグランド・バレエになると発表されているが、全幕完成に先立ち第一幕が世界初演された。物語としては、おてんば娘のかぐや姫が、村の孤児と恋に落ちるも、都に連れて行かれるというところまで。秋山瑛と柄本弾、足立真里亜と秋元康臣のダブルキャストで、筆者は秋山・柄本の組で観た。難しいパも軽々とやってのける、少年のような秋山には当たり役。古典の枠組みにはまりきらない秋山の魅力が、本作では余すところなく発揮されていた。世話物のうまい柄本も陽気な演技で大らかな雰囲気があり、かぐや姫の初恋の相手としての説得力があった。全編ドビュッシーの音楽が使われ、わけても『月の光』を使ったパ・ド・ドゥは、リフトが多い変化に富んだ振付で、詩情に溢れていた。金森作品らしさといえば、環境問題に対する視点があり、ダークサイドの象徴のような不気味な黒子も登場する。また、かぐや姫があっという間に成長する様子を、影絵のような映像で見せるのも面白かった。同時に、きらびやかな衣装を纏った24人の緑の精の背景に、リアルな竹やぶの映像が使われたり、演出が十分キャラクターを捉えているにも関わらず、ことさらに役柄を説明するような衣装やセットが選ばれていたりと、見せたいものや伝えたいものを明確にするためには、少し引き算が必要ではないかと感じる部分もあるにはあった。とまれ第一幕だけで批評するのはフェアではない。全幕の完成が楽しみである。

同時上演はベジャールの『中国の不思議な役人』とキリアンの『ドリーム・タイム』。カンパニーの指導陣の一人である木村和夫は、かつて不気味な役人を当たり役としていた。今回はキャストが若返り、大塚卓が初役で中国の役人を務めた。途中で帽子を取ると、若さの象徴のような大塚のサラサラの髪が現れる。髪は工夫次第でいかようにもできるだけに、役人を踊るダンサーの若さを意図的に見せようとしたのだろうか。見応えのある舞台ではあったが、出演者と役の間に多少距離が感じられる部分もあった。『ドリーム・タイム』は沖香菜子、三雲友里加、金子仁美、宮川新大、岡崎隼也の5名が、序盤から終盤のパ・ド・ドロワまで、ムーヴメントを途切れさせることなく、一筆書きのように描きあげた。極めて完成度の高い舞台だった。

(隅田 有 2021/11/06 東京文化会館大ホール 14:00)


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November 02, 2021

過去最悪の第5波をようやく脱したタイミングで、モーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)が4年ぶりの来日を果たした。もとは2020年に予定されていた舞台だが、パンデミックの影響を受け、2度の延期を経て実現した公演だった。

ツアー前半では、ジル・ロマン振付『人はいつでも夢想する』、ベジャール振付『ブレルとバルバラ』および『ボレロ』の3作が上演された。芸術監督のロマンは2017年の前回の来日公演に引き続き、振付家としての実力を示した。ジョン・ゾーンの曲を使い、映像も用いた『人はいつでも夢想する』は、どこか能を思わせる構成で、ワキのような位置づけの青年(ヴィト・パンシーニ)のもとに、シテのようなミステリアスな女性(ジャスミン・カマロタ)がやって来て、インスピレーションが万華鏡のように展開していく。振付に対して音楽の主張が若干強い部分もあるにはあったが、出演者の個性が生きる振付で、BBLのダンサーの持ち味が観客に良く伝わる作品だった。中性的でしなやかな脚を持つリロイ・モクハトレや、無駄を削ぎ落とした踊りで振付の核心を付く大貫真幹は、とりわけ素晴らしかった。続いて全編としては日本初演の『ブレルとバルバラ』と、来日公演の定番『ボレロ』が上演された。『ボレロ』のメロディはエリザベット・ロスで観た。強さ、恐ろしさ、エロティシズムの全てが、2017年のパフォーマンスを上回っていた。

ツアー後半に上演された『バレエ・フォー・ライフ』はクイーンとモーツァルトの名曲を使った作品で、初演は1996年。1991年と1992年に、ともに45歳で亡くなったフレディ・マーキュリーとジョルジュ・ドンに捧げら得た作品として知られているが、踊りとしてはジル・ロマン(当時)のパートが軸となっている。フレディ役のダンサーはカツラを被ったり派手な衣装を纏ったりして、舞台に現れては消えてゆくが、中央に置いた椅子に座り睨みをきかせているのはジルである(ここではあえてファーストネームで呼ぼう)。2021年10月現在ジル・ロマンはBBLの芸術監督で、本人の役では出ていない。「ショー・マスト・ゴー・オン」が流れるカーテンコールでは、ベジャールの代わりを務めている。代わりにガブリエル・アレナス・ルイズが、かつてのジルの激しさを彷彿とさせる踊りで、しっかりと存在感を示していた。

本公演は文化庁の『子供文化芸術活動支援事業』の一環として、18歳以下の子供たちが無料で招待されていた。舞台芸術の入門編としては、両プログラムともやや尖った内容だったのではないだろうか。公演終了後は劇場入り口で子供を迎える親御さんたちを多く見かけたが、舞台を見た子供の感想をご家族の方々はどのように受け止めたのだろうか。終演後に誰かと感想を共有するところまでが舞台芸術の醍醐味だと、いち舞台ファンとしての見解も示しておきたい。

(隅田有 2021/10/10, 2021/10/17 東京文化会館大ホール 14:00)


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September 07, 2021

 国内外で研鑽を積む10代の踊り手から、プロの道を歩み始めた新進ダンサー、そしてトップ・プリマに至るまでが集結した《BALLET AT A GATHERING》。主催者である末松かよは、エカテリングルク・バレエ団を経て現在は後進の指導に当たっており、本公演も、出演者や観客に「夢を持って進んでほしい」という彼女の強い想いから実現。プロフェッショナルへの途上であるメンバーが半数以上を占める中でも、各々が美質を存分に発揮し、未来へと繋がる一夜となった。

 

1部の幕開けは、梅野ひなた(ボリショイ・バレエ・アカデミー/スコレーバレエアート)、石川瑛也(ドレスデン・パルッカ・ダンス大学/スコレーバレエアート)、藪内暁大(サンフランシスコ・バレエ・スクール/ルニオンバレエ)による『フェアリードール』。バランスの良いキャスティングで、時折織り交ぜられる人形振りやユーモラスなマイムも決して大仰ではない。それぞれが役柄を理解しつつも、クラシックの様式を逸脱しない端正な踊りと息の合った掛け合いで舞台の熱量を高めていた。

このパ・ド・トロワを皮切りに、『ライモンダ』第2幕のヴァリエーションで陽性の魅力を引き出した藤本葉月(ヨーロピアン・スクール・オブ・バレエ/アイコ・シーマンバレエスタジオ)、同作第1幕のソロとコンテンポラリー作品『RE-collection』の双方から自身の多彩な身体言語を示した大町こなみ(ドルトムント・ジュニア・バレエ団/スコレーバレエアート)、『ジゼル』第2幕のヴァリエーションでノーブルな身のこなしと豊かな心情表現を見せた森本晃介(田中バレエアート)など、有望株による綿密に練り上げられたソロやパ・ド・ドゥがテンポよく続いてゆく。

 

 そして、2部冒頭に『コッペリア』第3幕のグラン・パ・ド・ドゥを踊ったのは山田ことみ(アメリカン・バレエ・シアター・スタジオ・カンパニー/ヤマダチエサニーバレエスクール)と萩本理王(ヨーロピアン・スクール・オブ・バレエ/山本紗内恵バレエスクール)。山田は、強靭なテクニックと押し出しの良さが際立ち、高く軽やかなジャンプや安定感のある回転に加え、自身から醸し出される溌剌とした雰囲気がスワニルダに適役だ。対する萩本も、音楽と調和した伸びやかなシークエンスが心地よく、踊る喜びに溢れたふたりの化学反応を堪能した。

また、『眠れる森の美女』第1幕よりローズ・アダジオのヴァリエーションを踊った田中月乃(チューリッヒ・タンツ・アカデミー/YOKOクリエイティブバレエ)が、初々しさと気品を兼ね備えた佇まいやラインの美しさに加え、音楽をたっぷり使ったバランスや回転数の多いピルエットもこれ見よがしではなく、流れの中で自然に取り入れていたことも印象深い。続く江見紗里花(プリンセス・グレース・アカデミー/橋本幸代バレエスクール&Jr.co)による『サタネラ』も、ひとつひとつのパが丁寧で、そのコケティッシュな表現からも将来性を感じさせた。

 

 ゲストとして登場した二山治雄は『ブルージュの大市』『エスメラルダ』のソロを披露。とりわけ前者においては、持ち前の柔らかなムーヴメントがブルノンヴィル作品に不可欠な浮揚感に結びつき、正確無比なステップや鮮やかなバットゥリー、跳躍の際に空中に描かれるポーズの造形美が出色であった。

『白鳥の湖』とウヴェ・ショルツ振付『ソナタ』で1部、2部ともにトリを飾ったのは中村祥子とヴィスラフ・デュデック。登場の瞬間から空気を変えるほどの圧倒的な存在感はこの日も健在で、特に『白鳥…』第2幕のグラン・アダジオでは、細部に至るまでの研ぎ澄まされた動きがいっそう円熟味を増し、観客を一気に物語へと引き込んだ。

 

今回の舞台を通して、出演ダンサーも観客もインスピレーションを感じ取ったのではなかろうか。終演後には、来年の開催も告知され、清々しい気持ちで会場を後にした。無限の可能性を秘めた踊り手たちに再び出会えることを心待ちにしたい。(宮本珠希 2021/8/6 長岡京記念文化会館)

 



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