July 13, 2025

東京バレエ団『眠れる森の美女』

ゴールデンウィーク初日に千秋楽を迎えた斎藤友佳理版『眠れる森の美女』は、満員御礼の賑わいであった。

古典の代表的な主人公オーロラ姫は、演じるバレリーナを選ぶ大役だ。主演の沖香菜子は、おそらく現在、オーロラ姫を最も完璧に踊るダンサーの一人だろう。シモテ奥のバルコニーから、チラッと覗きながら登場した瞬間から、プリンセスだと観客を納得させる有無を言わさぬ華があった。歩くタイミングもわずかに後乗りで、おっとりとした雰囲気を表現する。アラベスクはポーズに入ってから、さらに上げた足が一段と高く上がることで伸びやかさが際立った。ローズ・アダージオのアティチュードは、ポアントの先がフロアに突き刺さっているかのような見事なバランスで、バランスを取りながら4人の求婚者に視線を動かす余裕がある。終盤はバランスを取っている間から拍手が湧き起こり、曲が終わると大喝采に包まれた。王子の秋元康臣は、今年一月のバレエ協会神奈川支部で見せた、溌剌としたデジレ王子とは異なり、憂いを漂わせて登場した。斎藤版は二幕の幻想の場で王子とオーロラが触れ合わない点に特色があるが、秋元の影のある役作りは同シーンの叙情性を強調する。三幕のグラン・パ・ド・ドゥに至るまで、テクニックと煌びやかさを兼ね備えた主演二人の、舞台さばきに圧倒されっぱなしの公演だった。

脇を固めるダンサーも、役柄を持ち味と結びつけて、見応えのある踊りを見せた。リラの精の政本絵美は両手を上げたポーズにすっきりとした貫禄があり、沖のオーロラ姫とは異なる存在感で舞台に深みを加えた。今シーズン入団した二山治雄は足立真里亜をパートナーにブルーバード役で登場。ジャンプをすると空中で180度以上脚が開くダンサーだが、開脚の角度を抑えて古典の品格を優先させていた。キャスト変更の玉突きがあり、柄本弾がカラボス役で、元々カラボスにキャスティングされていた安村圭太が王様役で登場した。威厳があるのに神経質で、娘への愛を暴走させる王様が、オーロラ姫の魅力をさらに引き立てていた。

(隅田 有 2025/04/29 13:00 東京文化会館大ホール)


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