April 26, 2025
東京シティ・バレエ団『アブストラクト・バレエ』 -バランシンとプティパ-
東京シティ・バレエ団(以降”シティ”)が『パキータ』『アレグロ・ブリランテ』そしてバレエ団初演の『Symphony in Three Movements』からなるトリプル・ビルを上演した。
プティパの名作『パキータ』は、2017年に制作された安達悦子改訂振付版。体の角度や目線など、クラシック・バレエの正統な型は、再演ごとに洗練されてきた。例年11月に開催される《シティ・バレエ・サロン》で、クラシック作品を継続して上演していることは、古典のスタイルの獲得に一役かっているのではないだろうか。技術面も緊張感を高めることで、今後さらに磨きがかかっていくだろう。プリンシパルに植田穂乃香とキム・セジョンが出演。パ・ド・トロワの庄田絢香、新里茉利絵、岡田晃明は、テクニックのしどころを手堅く仕上げ、中盤の見せ場を盛り上げた。
バランシンの『アレグロ・ブリランテ』は2023年3月にバレエ団として初演して以来、短期間に再演を重ね、早くもバレエ団の代表作の一つとなっている。バレエの8つの基本ポジションをもとに、正面となる角度が次々と変わる点は、本作の面白みの一つだ。プリンシパルの吉留諒は、その時々の「正面」が明確で、スピード感と正確なステップで作品をグイグイと引っ張っていた。清田カレンは純クラシックの型を気持ちよく破り、特徴的なバランシンの肩のひねりを効果的に見せるなど、作品のエッセンスを見事に引き出していた。ダンサーたちは音の速さに流されず、要所要所にグリップのある動きを挟みながら、心地よく踊りこなしていた。15分弱の上演時間があっという間に感じられる、素晴らしい仕上がりであった。
バランシンの『Symphony in Three Movements』は、音どりの難しいストラヴィンスキーの音楽や、古典にはないオフバランスの動きなど、シティのレパートリーで鍛えられたダンサーたちの強みが発揮される作品であった。『アレグロ・ブリランテ』同様に、バレエ団が得意とする演目に育っていくことが期待される。
(隅田有 2025/03/16 ティアラこうとう大ホール 13:00)