August 12, 2024

井上バレエ団《ラ・シルフィード 全二幕 &グラン・パ・マジャル》

『ラ・シルフィード』は、ブルノンヴィル・スタイルを継承する井上バレエ団にとって代表作とも言える作品である。近年主演続きの根岸莉那と荒井成也が、二日目のシルフィードとジェイムスを務めた。



根岸は毎公演ごとに新境地を見せている。クラシック作品を踊る際の技術力の基盤となる軸の強さは、本作ではブルノンヴィルらしい余韻のある動きに生かされていた。しっかりとプリエを利かせて音を使い切り、ロマンティック・バレエの技法を丁寧に仕上げることで、シルフィードのフェミニンな魅力につなげていた点が素晴らしい。バランス力に加えジャンプも軽やかで、進行方向を次々と変えるアレグロのステップは、軽快な音楽との相乗効果もあり舞台に高揚感をもたらした。荒井のジェイムスは周囲に甘えたり怒りをぶつけたりと人間味があり、内面の弱い部分もしっかりと見せる。着地を誤魔化さず、移動距離のある踊りには勢いがあり、グエン(川合十夢)と交互に踊る場面では、川合も存在感を発揮して、ライバル同士競い合う様子がしっかりと表現されていた。エフィーに西沢真衣、ファースト・シルフに樽屋 萌が出演。マッジ役のマシモ・アクリも贅沢な配役であった。

同時上演は、石井竜一振付のシンフォニック・バレエ『グラン・パ・マジャル』で、プリンシパルを阿部 碧と檜山和久が務めた。2022年に初演された作品で、グラズノフ作曲『ライモンダ』より、十字軍側の役が踊る曲を使用している。『ラ・シルフィード』では前キリスト教的な異教徒とされる魔女が物語の鍵を握ることから、両作品の思わぬ関連性が浮かび上がった。

(隅田 有 2024/07/21 文京シビックホール 15:00)


outofnice at 15:30舞台評 
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