May 28, 2024

新国立劇場『ラ・バヤデール』

東京ではゴールデンウィークから7月後半にかけて、牧阿佐美版、熊川哲也版、ナタリア・マカロワ版の『ラ・バヤデール』が一気に上演される。新国立劇場がレパートリーに持つ牧版は、各幕に見所が配置されたバランスの良いプロダクションとして知られ、ラストは屋台崩しまでしっかりと見せる。高度な技術を要する振付と豪華なセットで、古典作品の醍醐味をたっぷりと堪能できる名作である。

ニキヤを務めた小野絢子は、ベールを被って登場する際の爪先や、水差しを持ったアラベスクなど、一つ一つの動きに緊迫感があり、ヒロインの一途でスピリチュアルな性質を振付を掘り下げることで表した。さらに二幕の婚約式で見せる、負荷の大きいアラベスクのバランスでは、ヒロインの悲しみと芯の強さを感じさせた。小野はかつて、影の王国のコール・ド・バレエの先頭に立ち、ブレないアラベスクを見せる新人として注目を浴びたことがある。ヒマラヤの山あいから降りてくる精霊たちは、全てニキヤの幻影だという解釈もあるが、とまれ本作はアラベスクがとりわけ象徴的に使用されている作品なのである。ソロルの福岡雄大は安定した技術力と押し出しの良さで、全幕を通じて物語の軸となっていた。ニキヤとガムザッティの間で揺れるような優柔不断さはなく、政治的に正しい決断を下した結果がガムザッティとの婚約なのだろう。前半は英雄と讃えられる戦士の優越性が勝っていたが、ニキヤの死を境として、後半はソロルの理性と感情が乖離していく。演技をことさらに作り込むよりも、高いテクニックを積み上げることで緊張感を高めていく、福岡らしい見事な舞台捌きであった。

主要なキャストは、ガムザッティに直塚美穂、ブロンズアイドルに奥村康祐、マグダヴェヤに福田圭吾、影の王国の第1から第3ヴァリエーションに五月女 遥、池田理沙子、飯野萌子が出演した。

(隅田 有 2024/05/04 新国立劇場オペラパレス 18:30)


outofnice at 21:00
記事検索