April 08, 2024

東京バレエ団《上野水香オン・ステージ》

芸術選奨文部科学大臣賞受賞記念第2弾として上演された、昨年2月の同タイトルの公演では、長年プリンシパルを務めた東京バレエ団の、ゲスト・プリンシパル就任が発表された。今年は紫綬褒章受章を記念したステージである。劇場入り口には、今回も赤地に白抜きの大入札がかかっていた。日本を代表するプリマ・バレリーナとして、上野の人気は衰えることを知らない。

一曲目のアロンソ版『カルメン』は、内股に脚を捻ったり、カウントごとに次々と体の向きを変えたりと、古典作品とは異なる体の使い方をする。上野が主演した過去の上演では、足の甲を強調するシンボリックなポーズや、脚を前方に高く上げるポーズなど、静止画を見せることに重きが置かれていたが、今回の上演では独特なポーズが、カルメンの強さや華やかさを表す手段として機能していた。ホセに柄本弾、エスカミーリョに宮川新太、ツニガに鳥海創、運命に政本恵美が出演。ホセ以外のソリストが独特な踊りの型を全面に押し出す中、柄本はポーズとポーズを繋ぐ動きに滑らかさを残すことで、嫉妬や愛情などの人間らしい情感を伝えた。その結果、登場人物で唯一正気なのがホセであるという解釈が、成り立っていたのではないだろうか。鳥海が切れ味の良い踊りや、椅子に片足を乗せて立った際の芝居がかったポーズなどで、不気味な存在感を示していた。

第二部前半は秋山瑛と生方隆之介のフレッシュなコンビを芯に『ドン・キホーテ』第三幕が抜粋で上演された。超絶技巧を易々と見せる二人だが、ジャンプは着地を誤魔化さず、回転であればまだもう1、2回れるくらいの余裕をもって纏めているため、踊りに品がある。メルセデスの伝田陽美とエスパーダの後藤健太朗が導入部を盛り上げ、三雲友里加と平木菜子がキトリの友人役で脇を固めた。続いて後半は上野と柄本によるローラン・プティ振付『タイス』(『マ・パブロワ』より)が上演された。

第三部の『ボレロ』は昨年の舞台同様、後半にかけて迫力を増すペース配分が際立っていた。本作を知り尽くしたダンサーならではの舞台だが、そもそも『ボレロ』のメロディを”知り尽くす”ほど踊る機会があるところからして別格である。カーテンコールは熱狂に包まれ、観客は立ち上がって拍手喝さいを送っていた。

(隅田 有 2024/03/19 東京文化会館 19:00)


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