November 29, 2023

東京シティ・バレエ団「シティ・バレエ・サロン vol.12」

2011年に始まり、2016年からは豊洲シビックセンターホールを拠点として開催されている、創作を中心とした人気シリーズ。第12回目となる今回は、常連の草間華奈とキム・ボヨンによる作品、そしてゲストの松崎えりと、同団ソリストの濱本泰然による作品の合計4作が並び、土日3公演が全て売り切れという大盛況の公演だった。

濱本振付『B possible』は和やかな演劇的なシーンで始まる。白または黒の衣装をまとった10名の男女(飯高安美、イリイン万梨野、葛西あおい、加勢凜々、五戸彩葉、柴田実侑、鈴木百花、永山稀恵、山畑将太、キム・キョンロク)が出演し、短いソロや複数のダンサーによる踊り、ティーカップやオペラ・グラスなどの小道具を使った場面など、趣の異なるシーンがテンポよく展開していく。ピエロの拵えのダンサー(山畑)が狂言回しとして登場し、各場面をつなぐ縦糸の役割を果たす。アメコミのヴィラン "ジョーカー"を連想させるメイクで、笑顔から一瞬で冷ややかな表情に変わるなど、ステージと客席との近さを生かした演出が効果を発揮していた。

キムはこれまでにも『ドン・キホーテ』『ライモンダ』『パキータ』など古典の抜粋を手がけており、今回は『ラ・バヤデール』2幕の婚約式のディヴェルティスマンが披露された。ガムザッティとソロルに根岸茉矢と大川彪、黄金の仏像に中村文哉、壺の踊りのセンターに井川こころ、パ・ダクシオンに石田ゆら、大場蒔音、田代有乃、中山柚子、谷口笙、ソン・ユノが出演。バレエ団が全幕をレパートリーに持たない作品を本シリーズで上演することは、所属ダンサーの新たな一面を見ることができるため、大変有意義である。

休憩を挟み後半の1作目は松崎振付の『Kukka』。フィンランド語で「花」を意味するとのことだが、タイトルから受ける印象とは少々異なり、スポーティな衣装をまとった男女によるエネルギッシュな踊りが、照明を絞った舞台で繰り広げられた。ステージから脚を垂らして座ったり、ダンサーをアシンメトリーに配置したりと、型にはまらない構成が面白い。8名のダンサー(成澤心優、井川こころ、池田萌恵、奥野伊咲、佐藤さくら、柴田実侑、鈴木百花、山畑将太、深見瑛斗、キム・キョンロク)それぞれの個性が引き立つ振付だった。

草間振付『百華繚乱』は昨年夏に⼤和シティー・バレエによって初演された作品である。本公演では松本佳織を芯に、18人の男女がバッハの『ブランデンブルク協奏曲 第3番』に合わせて踊った。色とりどりのロマンティック・チュチュをまとった女性陣が舞台狭しと踊り、飽和した華やかさが迫力に繋がっていた。複数の旋律が奏でる音符を、網羅的にステップで捉えていくような振付で、ダンサーには厳密な音取りが要求されるが、ウヴェ・ショルツ作品を得意としているバレエ団だけあって、出演者は危なげなく踊りこなしていた。わけても松本の踊りの解像度の高さは群を抜き、動きに無駄がないためアレグロでも表現の工夫を挟む余裕がある。松本のテクニックの強さとチャーミングな個性が発揮され、作品の仕上がりとの間に見事な相乗効果がもたらされていた。

(隅田 有 2023/11/12 11:00 豊洲シビックセンターホール)


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