September 04, 2023

東京バレエ団 子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』

今年で第11回目となる《めぐろバレエ祭り》が開催された。全幕バレエの見どころをテンポよく見せる、恒例の《子どものためのバレエ》は、昨年に続き『ドン・キホーテの夢』が上演された。東京バレエ団はワシーリエフ版『ドン・キホーテ』全幕をレパートリーに持っているが、本作も同氏の演出・振付による。メルセデスやドリアードの女王など、いくつかの主要な役が思い切りよくカットされ、2名のダンサーが前脚と後脚を務める、馬のロシナンテが登場するのがユニークだ。ストーリーを理解するための最小限のセリフをサンチョ・パンサが喋るが、踊りのシーンとは分けられており、言葉を使わないバレエの面白さを損ねていない。ところで1幕に挿入される”めぐろの秋刀魚”のエピソードは、昨年筆者が観た都内の別の会場では『小松川の小松菜』になっていた。上演場所に合ったご当地ネタを使っていると思われるが、そんな従来の笑いがしっくりとくるのも、本作の魅力の一つである。

さてその昨年の舞台でキザなエスパーダを好演した大塚卓が、今年は二枚目のバジルで登場。キトリは、技術力に加え、演技力にも磨きがかかる秋山瑛。1幕のバリエーションの冒頭でバジルからタンバリンを受け取る場面など、視線で感情を表すのが巧みだ。エスパーダの安村圭太は昨年、格好つける際のオーバーな演技が笑いを誘ったが、今年は少しトーンダウンしたようだ。ガマーシュの岡崎隼也は、個々のアイデアが優先されがちなコミカルな演技に、一貫性をプラスした。一例を挙げると、キトリのバリエーションの後半でギターをかき鳴らす演技は、仕草そのものの面白さに加え「音楽や芸術を愛する感受性豊かな男」というキャラクターに結びつけていた。演技に必然性が加わると、表現は力を増すのである。主なキャストは他に、ドン・キホーテ役がすっかり板についたブラウリオ・アルバレス、サンチョ・パンサに後藤健太朗、ロレンツォに岡司、キトリの友人に加藤くるみと皹才拡子、キューピッドに工桃子、ロシナンテに宮村啓斗と山仁尚、お嫁さん馬に寺田瑠唯と盒業酸い出演した。

(隅田 有 2023/08/27 15:00 めぐろパーシモンホール)


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