July 30, 2023

《オペラ座ガラ》―ヌレエフに捧ぐ― 【Aプログラム】

今年で没後30年のルドルフ・ヌレエフを記念したガラ・コンサートが上演された。1992年までパリ・オペラ座で活躍した元エトワールで、"ヌレエフの子どもたち"と呼ばれるダンサーの一人、フロランス・クレールがアーティスティック・ディレクションを務めた公演である。Aプログラムは3部構成の6演目で、6名のエトワール(オニール八菜、パク・セウン、マチアス・エイマン、ジェルマン・ルーヴェ、ポール・マルク、マルク・モロー)を含む、14名のダンサーが出演した。

第二部冒頭、ロビンズ振付『ダンス組曲』を踊ったマチアス・エイマンが素晴らしかった。若手の頃から、基本を崩さない質の高い踊りで、観客に感動を与えることができるダンサーであったが、今回の舞台では過去には見られなかった風格が加わっていた。エイマンのプレゼンスからは、目を見張るほどの高い集中力が感じられたが、同時に極めてリラックスしているようでもあった。一つ一つのステップは正確かつ自然で、息の長いシークエンスを途切れることなく披露する様子は、まるで振付などないのではないかと思わせるほど磨きがかかったものだった。もともと彼に備わっている素朴な愛らしさは、ステージ上でバッハの『無伴奏チェロ組曲』を奏でる福茉莉子をうっとりと眺める様子に生かされ、本作がダンサーと音楽家の共演によって完成する作品であることが明確に示された。あまたの才能豊かなダンサーの中でも、今回エイマンが見せた領域に到達するアーティストは一握りであり、それを目撃するのは観客としてこれ以上ない喜びである。

フランス地方の伝統的な踊りとアコーディオンの音楽に想を得た、ジャック・ガルニエ振付『オーニス』も、見応えのある作品だった。三人の男性ダンサー(アントワーヌ・キルシェール、ダニエル・ストークス、アクセル・イボ)が力みを全く感じさせない動きで、フォーク・ダンスのようなステップを踊る。三人が時間差で動く場面が面白いが、振りを合わせる場面でも、個々の身体性や呼吸のタイミングが優先され、三者三様の個性が作品の味わいとなっていた。

ヌレエフ版の演目としては『眠れる森の美女』"第3幕のパ・ド・ドゥ"(出演:パク、ルーヴェ)、『白鳥の湖』より ”第3幕のパ・ド・トロワ"(出演:オニール、モロー、アントニオ・コンフォルティ)、『ライモンダ』より “第3幕のグラン・パ”が上演された。『ライモンダ』で主演を務めたパクは、ヴァリエーションの中に挿入すべき小技を全てやり遂げようという気迫があった。パートナーのポール・マルクは、ヌレエフ作品を踊る上で必須となる、高い運動能力を備えたダンサーであった。

(隅田有 2023/07/26 東京文化会館 19:00)


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