May 03, 2023

東京バレエ団『かぐや姫』第2幕ほか

2017年にスタートした《上野の森バレエホリデイ》も今年で7回目。コロナ禍でもオンライン配信を駆使してファンを取り込み、すっかりゴールデンウィークの恒例イベントとなった。今年のメインは、金森穣版『かぐや姫』第2幕、ロビンズの『イン・ザ・ナイト』、ノイマイヤーの『スプリング・アンド・フォール』で構成されたトリプル・ビル。『かぐや姫』は全三幕のグランド・バレエになることが発表されていて、2021年11月に初演された第1幕に続き、今回は第2幕が世界初演された。主演のかぐや姫と道児は前回と同様に秋山瑛と柄本弾、および足立真里亜と秋元康臣の組み合わせ。加えて今回、影姫(ダブルキャストで沖香菜子と金子仁美)と帝(同、大塚卓と池本祥真)が主要な役として登場した。二幕からは独創的な展開となり、休憩時間にはあらすじを一読するように促すアナウンスが流れていた。

秋山は1幕のおてんば娘の延長線上に、宮廷生活に馴染めず途方に暮れるかぐや姫を作り上げた。打掛の下は白いユニタードで、ベジャールの『ルナ』をルーツとするバレエ的な文脈も、この衣装に取り入れられているのかもしれない。宮廷の男女を支配する影姫は本作オリジナルのキャラクターで、赤と黒を基調とした衣装は月蝕の赤い月のようでもある。産休を経て本公演から復帰した沖は、これまで真面目で純真な役柄の印象が強かったが、本作では二幕のもう一人の主役として妖艶で凄みのある踊りを見せた。次々と開く襖を思わせる巧みな転換や、要所要所に登場する不穏な黒衣など、金森ならではの効果的な演出が挿入されている半面、コール・ド・バレエはフォーメーションが型どおりであったり、翁が登場する場面は前後と雰囲気の相違があったりと、作品の芯が定まっていないような印象も受けた。今年秋に上演が予定されている第三幕では、金森作品の醍醐味である、動きそのものを通じて観客の感受性をえぐる、身体表現の極みが見られることに期待したい。

同時上演の2作は、実力者揃いのダンサーたちを一度に見られる、東京バレエ団が得意とする演目だ。『スプリング・アンド・フォール』は足立真里亜、大塚卓、生方隆之介、鳥海創ほかが出演。『イン・ザ・ナイト』は、秋山瑛と秋元康臣、中川美雪とブラウリオ・アルバレス、平木菜子と柄本弾の3組が出演した。

(隅田 有 2023/04/30 東京文化会館大ホール)


outofnice at 17:23舞台評 
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