March 03, 2023

ハンブルク・バレエ団来日公演 見所の紹介


ハンブルク・バレエ団が、コロナ禍以降最大規模となる総勢102名で来日した。2021年の舞台がパンデミックの影響を受け中止となり、今回5年ぶり9度目の来日公演だ。芸術監督として在任50周年を迎えるジョン・ノイマイヤーが率いるのは、今回が最後である。開幕直前、都内で記者会見が開催された。登壇者はノイマイヤーの他、プリンシパルの菅井円加、アンナ・ラウデール、イダ・プレトリウス、エドウィン・レヴァツォフ、アレクサンドル・トルーシュ、そして司会はNBS専務理事の盒凝吃彁瓠3幕記者会見でノイマイヤーが語った内容をもとに、本公演の見所をレポートする。
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Photo: Ayano Tomozawa


来日公演前半で上演されるのは《ジョン・ノイマイヤーの世界 Edition 2023》。ノイマイヤーの数多くの作品を一夜にして堪能できるガラ公演で、今回もノイマイヤー自身が日本の観客のために選んだ作品が並ぶ。二幕後半に挿入される『ゴースト・ライト』はコロナ禍で生まれた作品だ。2020年、ハンブルク・バレエ団は1日10回、6人ずつ1時間の枠で、広いスタジオの左右の窓を全開にして、カンパニークラスを再開した。ノイマイヤーは毎日全てのクラスを見て回り、この条件であれば創作を再開することが可能だと感じたそうだ。ソーシャル・ディスタンスへの配慮から、6人ずつ、もしくはプライベートでもパートナー同士のダンサーを単位としている。ダヴィッド・フレイの演奏するシューベルトからインスピレーションを得ており、オーケストラによる楽曲の使用も回避した。「ゴースト・ライト」とは劇場がしまっている間、安全のために灯される常夜灯のような明かりだが、かつて劇場で活躍した歌手やダンサーのゴーストがこの灯を頼りに夜の間ステージに立ち、結果として昼の舞台が過去の亡霊に干渉されることを防ぐという言い伝えもある。ノイマイヤーは本作を仕上げた後、日本の伝統芸能である能との関連性を見出したのだそうだ。

2016年、2018年に上演された《ジョン・ノイマイヤーの世界》でも今回の公演と同様に、ラストは『作品100 モーリスのために』から『マーラー交響曲第3番』という流れで上演されているが、この2作の関係性についても記者会見で語られた。ノイマイヤーが『マーラー交響曲第3番』に取り組んでいた時、ベジャールも同曲に振り付けていることを新聞で知り、強い興味に駆られてベジャールの元を訪ねたという。二人は意気投合して、ノイマイヤーはマーラーの交響曲第1番をブリュッセルのベジャールのカンパニーに振り付け、ベジャールはノイマイヤーとマリシア・ハイデのために『椅子』を改訂し、さらに一夜ものの演目をハンブルクで上演した。『作品100 モーリスのために』がベジャールの70歳の誕生日を記念して振り付けられた背景には、こんなエピソードがあったそうだ。

今回上演されるもう一つの演目は『シルヴィア』。パリ・オペラ座に『くるみ割り人形』を振り付けた際、記者会見で受けた質問がクリエーションのきっかけになったという。ノイマイヤーは『コッペリア』を振り付ける意向があるかを問われ、即答で否定した後、あまり深く考えずに『シルヴィア』なら可能性があると答えたという。すぐに当時の芸術監督のブリジット・ルフェーヴルからオファーがあり、制作が実現したのだそうだ。今回はノイマイヤーが、タイトルロールの資質をすべて持っていると絶賛する菅井円加、そして本作ではバイキングの血が騒ぐという、普段は可憐なデンマーク出身のイダ・プレトリウスのダブルキャストで出演する。

記者会見では、芸術監督を退いた後の、ノイマイヤーの活動についても言及された。今年84歳の巨匠は、これからも精力的に作品を生み出していくようだ。芸術監督の立場でクリエーションを行うことは、キャスティングしたダンサーだけでなく、選ばなれなかったダンサーに対しての責任も負うという側面があった。家族のようにカンパニーを愛するがゆえの苦しみで、長年様々な迷いもあったが、手がけている作品に集中したいという思いも抱えていたという。芸術監督引退後もノイマイヤーの作品はハンブルク・バレエ団のレパートリーに残るだけでなく、新たな作品を作り続けるという情報に、多くのバレエ・ファンは胸をなで下ろしているのではないだろうか。
(隅田 有)

≪公演情報≫
ハンブルク・バレエ団 2023年日本公演

会場:東京文化会館大ホール

演目:
《ジョン・ノイマイヤーの世界 Edition2023》
3月2日(木)19:00
3月3日(金)19:00
3月4日(土)14:00
3月5日(日)14:00

『シルヴィア』
3月10日(金)19:00
3月11日(土)13:30
3月11日(土)18:00
3月12日(日)14:00

詳細:NBS日本舞台芸術振興会 Webサイト
https://www.nbs.or.jp/stages/2023/hamburg/


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