May 07, 2022

東京バレエ団『ロミオとジュリエット』

東京バレエ団がジョン・クランコ版『ロミオとジュリエット』をバレエ団として初演した。トリプルキャストで初日が沖 香菜子と柄本弾、二日目が足立真里亜と秋元康臣、最終日が秋山 瑛と池本祥真がそれぞれ主演した。5月1日の様子を報告する。


ジュリエットの秋山は、先月プリンシパルに任命されたばかりで、伸び盛りのダンサーが放つ魅力に溢れていた。もともとのテクニックの強さに加え、近年は公演ごとに主役のオーラが増している。本作では秋山の個性の一つである芯の強さが、ジュリエットを運命の犠牲者ではなく、愛を貫く現代的な人間像に昇格させていた。ロミオの池本は高い身体能力と技術力を持ち、王子もキャラクテールもこなす器用なダンサーだ。本作でも細部まで役を作り込んでおり、1幕の乱闘の場面では刺された仲間を悼む優しさと繊細さが見られた。またこの日はキャピュレット夫人に、やはり踊りも芝居も上手い伝田陽美が出演し、若さの残るジュリエットの母を好演した。ところで池本も伝田も、他の舞台に出演する二人を知っているだけに、もう一歩役を深められるのではと感じたことも付け加えておきたい。役の型に自分の個性をはめようとするよりも、自身の個性に役を引き寄せると、更に説得力や凄みが増すのではないだろうか。

マキューシオの生方隆之介は愛嬌があり、おどけた仕草に嫌味がない。ティボルトの鳥海創は際限のない怒りの表現に迫力があった。キャピュレット公の木村和夫は、わずかに首をかしげるだけで苛立ちを感じさせる。明るいベンヴォーリオに玉川貴博パリスに南江祐生、ジプシーに政本絵美、中川美雪、皹才拡子、カーニバルのダンサーにブラウリオ・アルバレス、ヴェローナの大公に中嶋智哉、僧ローレンスに岡司、ロザリンドに加藤くるみ、乳母に坂井直子が出演。脇を固める出演者が舞台を盛り上げるのは、東京バレエ団の舞台を見る楽しみの一つで、本作でも序盤のモンタギュー家とキャピュレット家の小競り合いから、良いエネルギーが感じられた。若手からベテランまで芝居に一貫性が感じられるのは、斎藤友佳理がカンパニーを率いるようになってからの特色と言えるだろう。

(隅田有 2022/05/01 14:00 東京文化会館大ホール)


outofnice at 16:25舞台評 
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