November 02, 2021
モーリス・ベジャール・バレエ団来日公演
過去最悪の第5波をようやく脱したタイミングで、モーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)が4年ぶりの来日を果たした。もとは2020年に予定されていた舞台だが、パンデミックの影響を受け、2度の延期を経て実現した公演だった。
ツアー前半では、ジル・ロマン振付『人はいつでも夢想する』、ベジャール振付『ブレルとバルバラ』および『ボレロ』の3作が上演された。芸術監督のロマンは2017年の前回の来日公演に引き続き、振付家としての実力を示した。ジョン・ゾーンの曲を使い、映像も用いた『人はいつでも夢想する』は、どこか能を思わせる構成で、ワキのような位置づけの青年(ヴィト・パンシーニ)のもとに、シテのようなミステリアスな女性(ジャスミン・カマロタ)がやって来て、インスピレーションが万華鏡のように展開していく。振付に対して音楽の主張が若干強い部分もあるにはあったが、出演者の個性が生きる振付で、BBLのダンサーの持ち味が観客に良く伝わる作品だった。中性的でしなやかな脚を持つリロイ・モクハトレや、無駄を削ぎ落とした踊りで振付の核心を付く大貫真幹は、とりわけ素晴らしかった。続いて全編としては日本初演の『ブレルとバルバラ』と、来日公演の定番『ボレロ』が上演された。『ボレロ』のメロディはエリザベット・ロスで観た。強さ、恐ろしさ、エロティシズムの全てが、2017年のパフォーマンスを上回っていた。
ツアー前半では、ジル・ロマン振付『人はいつでも夢想する』、ベジャール振付『ブレルとバルバラ』および『ボレロ』の3作が上演された。芸術監督のロマンは2017年の前回の来日公演に引き続き、振付家としての実力を示した。ジョン・ゾーンの曲を使い、映像も用いた『人はいつでも夢想する』は、どこか能を思わせる構成で、ワキのような位置づけの青年(ヴィト・パンシーニ)のもとに、シテのようなミステリアスな女性(ジャスミン・カマロタ)がやって来て、インスピレーションが万華鏡のように展開していく。振付に対して音楽の主張が若干強い部分もあるにはあったが、出演者の個性が生きる振付で、BBLのダンサーの持ち味が観客に良く伝わる作品だった。中性的でしなやかな脚を持つリロイ・モクハトレや、無駄を削ぎ落とした踊りで振付の核心を付く大貫真幹は、とりわけ素晴らしかった。続いて全編としては日本初演の『ブレルとバルバラ』と、来日公演の定番『ボレロ』が上演された。『ボレロ』のメロディはエリザベット・ロスで観た。強さ、恐ろしさ、エロティシズムの全てが、2017年のパフォーマンスを上回っていた。
ツアー後半に上演された『バレエ・フォー・ライフ』はクイーンとモーツァルトの名曲を使った作品で、初演は1996年。1991年と1992年に、ともに45歳で亡くなったフレディ・マーキュリーとジョルジュ・ドンに捧げら得た作品として知られているが、踊りとしてはジル・ロマン(当時)のパートが軸となっている。フレディ役のダンサーはカツラを被ったり派手な衣装を纏ったりして、舞台に現れては消えてゆくが、中央に置いた椅子に座り睨みをきかせているのはジルである(ここではあえてファーストネームで呼ぼう)。2021年10月現在ジル・ロマンはBBLの芸術監督で、本人の役では出ていない。「ショー・マスト・ゴー・オン」が流れるカーテンコールでは、ベジャールの代わりを務めている。代わりにガブリエル・アレナス・ルイズが、かつてのジルの激しさを彷彿とさせる踊りで、しっかりと存在感を示していた。
本公演は文化庁の『子供文化芸術活動支援事業』の一環として、18歳以下の子供たちが無料で招待されていた。舞台芸術の入門編としては、両プログラムともやや尖った内容だったのではないだろうか。公演終了後は劇場入り口で子供を迎える親御さんたちを多く見かけたが、舞台を見た子供の感想をご家族の方々はどのように受け止めたのだろうか。終演後に誰かと感想を共有するところまでが舞台芸術の醍醐味だと、いち舞台ファンとしての見解も示しておきたい。
(隅田有 2021/10/10, 2021/10/17 東京文化会館大ホール 14:00)
(隅田有 2021/10/10, 2021/10/17 東京文化会館大ホール 14:00)