September 07, 2021

《BALLET AT A GATHERING》

 国内外で研鑽を積む10代の踊り手から、プロの道を歩み始めた新進ダンサー、そしてトップ・プリマに至るまでが集結した《BALLET AT A GATHERING》。主催者である末松かよは、エカテリングルク・バレエ団を経て現在は後進の指導に当たっており、本公演も、出演者や観客に「夢を持って進んでほしい」という彼女の強い想いから実現。プロフェッショナルへの途上であるメンバーが半数以上を占める中でも、各々が美質を存分に発揮し、未来へと繋がる一夜となった。

 

1部の幕開けは、梅野ひなた(ボリショイ・バレエ・アカデミー/スコレーバレエアート)、石川瑛也(ドレスデン・パルッカ・ダンス大学/スコレーバレエアート)、藪内暁大(サンフランシスコ・バレエ・スクール/ルニオンバレエ)による『フェアリードール』。バランスの良いキャスティングで、時折織り交ぜられる人形振りやユーモラスなマイムも決して大仰ではない。それぞれが役柄を理解しつつも、クラシックの様式を逸脱しない端正な踊りと息の合った掛け合いで舞台の熱量を高めていた。

このパ・ド・トロワを皮切りに、『ライモンダ』第2幕のヴァリエーションで陽性の魅力を引き出した藤本葉月(ヨーロピアン・スクール・オブ・バレエ/アイコ・シーマンバレエスタジオ)、同作第1幕のソロとコンテンポラリー作品『RE-collection』の双方から自身の多彩な身体言語を示した大町こなみ(ドルトムント・ジュニア・バレエ団/スコレーバレエアート)、『ジゼル』第2幕のヴァリエーションでノーブルな身のこなしと豊かな心情表現を見せた森本晃介(田中バレエアート)など、有望株による綿密に練り上げられたソロやパ・ド・ドゥがテンポよく続いてゆく。

 

 そして、2部冒頭に『コッペリア』第3幕のグラン・パ・ド・ドゥを踊ったのは山田ことみ(アメリカン・バレエ・シアター・スタジオ・カンパニー/ヤマダチエサニーバレエスクール)と萩本理王(ヨーロピアン・スクール・オブ・バレエ/山本紗内恵バレエスクール)。山田は、強靭なテクニックと押し出しの良さが際立ち、高く軽やかなジャンプや安定感のある回転に加え、自身から醸し出される溌剌とした雰囲気がスワニルダに適役だ。対する萩本も、音楽と調和した伸びやかなシークエンスが心地よく、踊る喜びに溢れたふたりの化学反応を堪能した。

また、『眠れる森の美女』第1幕よりローズ・アダジオのヴァリエーションを踊った田中月乃(チューリッヒ・タンツ・アカデミー/YOKOクリエイティブバレエ)が、初々しさと気品を兼ね備えた佇まいやラインの美しさに加え、音楽をたっぷり使ったバランスや回転数の多いピルエットもこれ見よがしではなく、流れの中で自然に取り入れていたことも印象深い。続く江見紗里花(プリンセス・グレース・アカデミー/橋本幸代バレエスクール&Jr.co)による『サタネラ』も、ひとつひとつのパが丁寧で、そのコケティッシュな表現からも将来性を感じさせた。

 

 ゲストとして登場した二山治雄は『ブルージュの大市』『エスメラルダ』のソロを披露。とりわけ前者においては、持ち前の柔らかなムーヴメントがブルノンヴィル作品に不可欠な浮揚感に結びつき、正確無比なステップや鮮やかなバットゥリー、跳躍の際に空中に描かれるポーズの造形美が出色であった。

『白鳥の湖』とウヴェ・ショルツ振付『ソナタ』で1部、2部ともにトリを飾ったのは中村祥子とヴィスラフ・デュデック。登場の瞬間から空気を変えるほどの圧倒的な存在感はこの日も健在で、特に『白鳥…』第2幕のグラン・アダジオでは、細部に至るまでの研ぎ澄まされた動きがいっそう円熟味を増し、観客を一気に物語へと引き込んだ。

 

今回の舞台を通して、出演ダンサーも観客もインスピレーションを感じ取ったのではなかろうか。終演後には、来年の開催も告知され、清々しい気持ちで会場を後にした。無限の可能性を秘めた踊り手たちに再び出会えることを心待ちにしたい。(宮本珠希 2021/8/6 長岡京記念文化会館)

 



piyopiyotamaki at 02:42舞台評 
記事検索