November 29, 2020

山本裕ダンス公演『Night Parade』


山本裕が新作『Night Parade』で芸術祭に参加した。無線機の発するようなとぎれとぎれの無機的な音が響く中で踊りが始まる。ストーリーはなく、1時間を動きで埋めつくした。山本は、京都の水谷みつるのところから石井みどり・折田克子へと進み、今では現代舞踊界有数の男性ダンサーのひとり。彼がここで使った動きは新しい時代の中からにじみ出てきたものであると同時に、日本の現代舞踊が長い時間をかけて積み上げてきた歴史を感じさせた。山本は、石井漠の系統を超えて江口隆哉、芙二三枝子らのアーカイブ作品などでも主要パートを踊れる蓄積を持つダンサーだ。

有路蘭、飯塚友浩、近藤みどり、鈴木遼太、藤村港平、船木こころ、南帆乃佳、脇坂優海香を、まずたっぷり動かし、彼自身と船木こころがそれそれ主要パートを踊り、さらにデュエットになる。サキソフォンの即興的な演奏も加わり。激しい起伏を伴う作品の核心が出現した。『Night Parade』はていねいに動きを選び、それを地道に盛り上げて行くことで、今の時代そのものを舞台上に出現させた佳品だった。

(山野博大 2020/11/4 座・高円寺2)

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