November 03, 2019

小林紀子バレエ・シアター第116回公演《ミックス・プログラム》


最初はマクミランの『コンチェルト』だった。第1楽章を真野琴絵と上月佑馬、第2楽章を島添亮子とジェームス・ストリーター、第3楽章を高橋怜子がそれぞれ芯になり踊った。1966年にベルリンで初演した時、マクミランは37歳の働き盛り。彼の代表作の一本だ。初演時はユルゲン・ローゼの美術だったが、小林紀子バレエシアターが初めて上演した2006年、デボラ・マクミランの日本画風のセットが使われた。第1楽章の真野、上月は軽快に、第2楽章の島添、ストリーターは格調高くゆったりと、第3楽章の高橋ははなやかに踊り、マクミランの傑作を、日本の舞台に呼び戻した。

次の『レ・パティヌール』はアシュトンの作品。1937年ロンドン初演だ。当時のスケートの楽し気な様子を描いたもので、今のスケートの超絶技巧などとは無縁の世界。ブルー・ボーイを八幡顕光、ブルー・ガールズを真野琴絵、廣田有紀、ホワイト・カップルを島添亮子、望月一真が踊り、かつての優雅な氷上の舞を再現した。

最後の『エリート・シンコペーションズ』は、1974年ロンドン初演。マクミラン45歳の作品だ。舞台奥にピアノ2台(ひとつはアップライトのホンキートンク)を置き、大人数のバンドのメンバーが座る。ピアニスト(中野孝紀)が立って指揮をする。20世紀初頭のアメリカのダンスホールの情景をバレエ化したのだ。この作品を初演直後にニューヨークで見たという石井清子の話によると、ロンドンでは大評判だったのに、ニューヨークで上演した時はあまり話題にならなかったようだ。アメリカ人はイギリス人が創ったジャズのバレエを認めたくなかったのだろう。イアン・スパーリングがデザインしたポップな衣裳を着たダンサーたちが登場。真ん中をストリーターと踊った高橋怜子には、とりわけこの衣裳が似合った。ポール・ストバートの指揮、東京ニューフィルハーモニック管弦楽団の演奏。

(山野博大 2019/9/7 新国立劇場 中劇場)

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