October 18, 2019

熊川哲也Kバレエカンパニー×東京フィルハーモニー交響楽団:熊川版『カルミナ・ブラーナ』世界初演


熊川哲也が、カール・オルフの『カルミナ・ブラーナ』をバレエ化した。アンドレア・バッティストーニ指揮の東京フィルハーモニー交響楽団と大勢の合唱団による演奏が始まった。舞台いっぱいに広がった黒い衣裳の大合唱団の背後から、このバレエの主役である青年アドルフの関野海斗と女神フォルトゥーナの中村祥子が現れた。

振付者の熊川は、さらに花(毛利実沙子、佐伯美帆、高橋怜衣)、植物(石橋奨也、杉野慧、栗山廉、グレゴワール・ランシエ、奥田祥智、田中大智)、水(平野佐代子、大井田百、新井田ゆり、栗山結衣、蘆文伊)、鳥(山本雅也、酒匂麗、佐野朋太郎)、太陽(宮尾俊太郎、高橋裕哉)、ヴィーナス(矢内千夏他6人)、ダビデ(堀内將平他5人)、天使(河合有里子他11人)、サタン(遅沢祐介)、白鳥(成田紗弥)、神父(伊坂文月、石橋奨也他13人)を次々と登場させ、舞台上に世界をまるごと出現させた。

その世界は、アドルフ(ヒットラー?)の思いがけない行動によってしだいにたいへんなことになって行く。しかし女神フォルトゥーナは、アドルフの暴走を許さなかった。

言葉により表現することのないバレエは、それを見る者が、その中で使われている動きが意味する内容を正しく理解するまでに、ある程度の時間を必要とする。熊川版『カルミナ・ブラーナ』は再演を繰り返すうちに、観客ひとりひとりの心の中によりいっそう深くくいこんで来るはずだ。次に見られる機会が早く来ることを切に望む。

生演奏で『カルミナ…』を聞き、その世界に遊ぶことの豊かさを満喫した一夜だった。

(山野博大 2019/9/4 オーチャードホール)

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