October 18, 2019
舞踊作家協会:連続公演No.206《花柳寿南海・折田克子追悼》
舞踊作家協会のメンバーだった花柳寿南海と折田克子を追悼する会が行われた。雑賀淑子がエルガーの音楽を使って振付けた“プロローグ”に、黒衣の石黒節子、江原朋子、加藤みや子、ケイタケイ、雑賀淑子、田中いづみ、玉田弘子、平多実千子、木許恵介、小島直子、桑原麻実、伊藤友里絵が登場し、舞台中央に立つ木許から、ひとりひとり白い花を受け取り、それを二人の霊に捧げた。
第1部《折田克子の思い出を語る》は、彼女が踊る『紅い月夜』の映像から。これは1991年2月に行われた舞踊作家協会女流展《それぞれの四季》でのソロ。折田のしっかりした体幹からあふれ出す動きによる確かな語り掛けが、観客に在りし日の折田の実力を実感させた。次いでパッヘルベルの音楽を使った『カノン』を石井みどり・折田克子舞踊研究所の手柴孝子、仲野恵子、松永茂子、阿部友紀子、木許恵介、日野利和が踊り、師を追悼した。
《座談会》となり、雑賀淑子の司会で、尾上墨雪、手柴孝子、仲野恵子、花柳茂珠、新井雅子、山野博大が二人の思い出を語った。手柴、仲野が折田の日常を紹介し、花柳茂珠が彼女との交友を、また尾上墨雪らが花柳寿南海の踊りの奥深さを語った。
第2部の《花柳寿南海の俳句を踊る》では、彼女が詠んだ俳句を、花柳面、森嘉子が踊り、雑賀淑子の琵琶と松尾慧の笛が語りかけた。「ものうげに梅雨の晴れ間の白き人」を白い衣裳の花柳面がしみじみと舞い、「風鈴のビードロ涼し夏座敷」をアフロ・ジャズ・ダンスの森嘉子がゆったりとした動きを使い、日本の家の夏の風景を創り出した。そして「けい古日の夜は必ず冷や奴」を雑賀淑子の琵琶と語り、松尾慧の笛が、寿南海の好みを観客に伝えた。これらの俳句は、舞踊関係者で作る“まよい句会”の席で寿南海が披露したもの。この句会はすでに半世紀近い歴史を有し、故人となった貝谷八百子、谷桃子、志賀美也子、有馬五郎、庄司裕らもメンバーだった。句作は二の次で、おしゃべりと飲み食い優先の“句会”が今も年に1,2度、神楽坂で開かれている。
花柳寿南海が舞踊作家協会女流展《それぞれの四季》で踊った『立春の舞』の映像となった。きりりと引き締まった寿南海の動きの迫力が客席を圧倒した。
二人の稀有な才能に恵まれた舞踊家が遺したかけがえのない成果は、それを見た人の記憶の中にしかとどまらないという舞踊芸術の潔さに想いを馳せた会だった。
(山野博大 2019/9/3 ティアラこうとう 小ホール