September 15, 2019

勅使川原三郎+KARAS《アップデイトダンス》シリーズ第65弾『ロスト イン ダンス』


勅使川原三郎+KARASが本拠のアパラタスで継続的に行っている《アップデイトダンス》シリーズの第65弾は勅使川原三郎振付の『ロスト イン ダンス』だった。このシリーズの舞台はだいたい1週間の開催で、日々改良が加えられる。だから、先に行くほど内容が良くなると考えがちだ。しかし作者にとっての「良い」が、そのまま見る側の「良い」になるとは限らない。私はその初日を見た。

『ロスト イン ダンス』の初演は2018年、キューバとのことだ。今回は、リヒテルの弾くベートーヴェン、シューベルトのソナタで、勅使川原と佐東利穂子が踊った。まず勅使川原のゆっくりとした踊りでスタート。佐東がはなやかな動きでそれに続いた。彼女の動きは、このところいちだんと鋭さを増している。寄り添った勅使川原と佐東が、ひとつの黒いコートの袖にそれぞれが交互に腕を通し、衣裳をリレーしながらリヒテルのピアノと微妙に交錯した。いつもと同じ流れであり、動きの質も変っていない。しかし舞台から受ける印象は、みごとにアップデイトされており、いつもと同じではなかった。

踊ると瞬時に、そこまでの自分は失われる。しかし踊り続けることで、そのまま永遠に生き続けなければならないのが、ダンサーの宿命なのだということを『ロスト イン ダンス』は観客に伝えてきた。

(山野博大 2019/8/5 KARASアパラタス)



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