August 02, 2018

【ダンス・タイムズがお勧めする 2018年8月公演】

ダンス・タイムズ編集部が選んだ来月のお勧め公演をご紹介します。あくまでもメンバー個人の予想に基づいていますので、公演の内容を保証するものではありません。ぜひ、観客の皆さまが劇場へ行ってご確認ください。また、720日時点の情報を基にしていますので、日程、出演者、演目等が変更される場合もあります。完売の場合もありますので、事前にご確認ください。

 

【ダンス・タイムズがお勧めする 2018年8月公演】


◆日本バレエ協会創立60周年記念《全国合同バレエの夕べ》

8月3、4日(新国立劇場オペラパレス)

◇協会創立60周年を祝っての《全国合同バレエの夕べ》は、日本全国のバレエの現状を知る上で見逃せない機会だと思う。毎回上演の『卒業舞踏会』では、高岸直樹の老将軍、マシモ・アクリの女校長という配役が用意されている。どのようなラブ・シーンが展開されるのか、これも見逃すわけにはいかない。(山野博大)


◆イデビアン・クルー『排気口』

8月9〜12日(世田谷パブリックシアター)

◇イデビアン・クルーが『排気口』を上演したのは2008年8月だった。それをこんどはどのように改定して見せてくれるのだろうか。安藤洋子、金子あい、斉藤美音子ら、前回踊ったダンサーがまた登場する。10年の時の経過が彼らにどのような変化をもたらしているのかを見るのも楽しみだ。(山野)


◆大和シティバレエ『YAMATO City Ballet Summer Concert2018』

8月10日(大和市文化創造拠点シリウス 芸術文化ホール)

◇国内外で活躍するダンサーたちをゲストに招き、大和市に拠点を置く佐々木三夏バレエアカデミーの在校生たちと共に4演目を上演する。関直人振付の『ゆきひめ』は日本の題材を用いた”バレエ・ブラン(白のバレエ)”。70年代の初演時は女性パートを日本舞踊の踊り手が務めたそうだ。小野絢子は日舞の素養もあり、楽しみだ。新国立劇場で2016年に上演された宝満直也振付の『3匹の子ぶた』の再演も見逃せない。福田圭吾、八幡顕光、池田武志の初演キャストに菅井円加が新たに加わる。もう一つの宝満振付作品は『Evony Ivory』。宝満本人と米沢唯が出演する。鈴木未央振付改訂の『千夜一夜物語』は、五月女遥が主演する。小柄ながら個性と存在感のある五月女の演じるシェヘラザードに期待が高まる。(隅田有)


◆日本舞踊の可能性 vol.1 『展覧会の絵』

8月10日(浅草公会堂)

◇日本舞踊は古典作品を保存、継承するだけでなく創作も盛んに行っている。多ジャンルとのコラボも行われるものの、成功するのは容易ではない。しかし、藤間蘭黄による『信長』は、バレエのファルフ・ルジマトフと岩田守弘を迎えて高い評価を得、再演を繰り返している。それは振付、演出、出演する舞踊家たちがそれぞれの芸術に対して理解と尊敬をいかに深め、コミュニケーションを図るかによるのだろう。その蘭黄が再びバレエとのコラボに挑戦するのが、ムソルグスキーのピアノ組曲『展覧会の絵』だ。2017年にキエフ市内にある「キエフの大門」(『展覧会の絵』の終曲で、同地の観光名所でもある「黄金の門」)でピアノの生演奏によって初演され、バレエダンサーであり現在はキエフ国立バレエ学校芸術監督でもある寺田宣弘と蘭黄が踊った。その後、2018年にはウクライナ国立歌劇場でのガラ公演にも招かれた本作が、東京で初演される。ピアノ演奏は木曽真奈美。そして、『鷺娘』ではプロジェクションマッピングによる映像とのコラボが行われ、蘭黄が映像の中で、祖母(人間国宝の藤間藤子)、母(藤間蘭景)と共演する。日本舞踊に流れる雄大な歴史と舞踊家たちが紡いできた時間の美しさ、愛おしさ、革新を受け入れる度量の広さを感じさせる公演になるだろう。タイトルにあるように「日本舞踊の可能性」がvol.1、2、3…、と続いていくことを願い、また私たちも観客という同伴者になりたいものだ。(稲田奈緒美)


アクラム・カーン カンパニー『チョット・デッシュ』

2018年8月11、12、17、18、22〜25日(ロームシアター京都・ノースホール、金沢21世紀美術館シアター21、横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール)

◇2013年に彩の国さいたま芸術劇場で上演されたアクラム・カーンのソロ公演『DESH-デッシュ』が、子供も鑑賞できるようにリクリエーションされた『チョット・デッシュ(Chotto Desh)』として再び日本に戻ってくる。『DESH』は、カーンがバングラデシュ系イギリス人という自身のルーツや父の人生、子供の頃の思い出を言葉とダンスで紡いでいく構成で、ティム・イップの幻想的な舞台美術と映像の効果もあり、珠玉の作品になっていた。今作の『チョット・デッシュ』は、カーン自身の出演はなく、カンパニーのデニス・アラマノスとニコラス・リッチーニが交代出演し、シーンを再構築して60分程度に短縮している。ダンスに限らず、児童向けの舞台作品は非日常の世界を描いた夢あふれるファンタジーが多いが、カーンは自分の生きているこの世界を、痛みを抱えながら慈しみを持って描いている。この作品に一人でも多くの子供が触れてくれることを願う。(折田 彩)


◆佐々木美智子バレエスタジオ『バフチサライの泉』

8月16日(八尾プリズムホール)

◇創立40周年を記念して5年ぶりに上演される『バフチサライの泉』は、同団の看板演目であり、中でも、佐々木 大のヌラリは当代きっての当たり役だ。そして、今回は、ギレイ汗を演じる山本隆之にも期待が高まる。きっと新境地を見せてくれるに違いない。他にも、瀬島五月、福岡雄大、福田圭吾ら“踊り盛り”の実力派ダンサーや、佐々木夢奈、林高弘など若手の注目株が名を連ねる。豪華キャストによる、暑さを吹き飛ばすような気迫溢れる踊りに酔いしれたい。(宮本珠希)


◆『エコルマ乗っ取り大作戦!』

8月19日(狛江エコルマホール)

◇「エコルマ」とは、東京は狛江市にある狛江エコルマホールのこと。子供たちが、振付家でダンサーの伊藤キムと一緒にダンスをしたり、美術家のTOPPIとオブジェを作ったり、このホールをまるごと使って遊園地のようにしてしまおうという作戦だ。小学2年生〜高校3年生の子供たち30名が10日に渡ってワークショップを行い、最終日には発表を行う。発表公演(ダンス&インスタレーション)の入場は無料で、飛び入り参加も可能とのこと。スキンヘッドに眼帯のおじさん(伊藤キム)との衝撃的な出会いから10日を経て、自分たちの身体、紙、布、そして建物等々を自由に使って、子供たちがどんなパーティーを繰り広げるのか見届けよう!(吉田 香)


◆五耀會《動物で描く日本舞踊》

2018年8月22日(東京芸術劇場・プレイハウス)

◇五耀會は日本舞踊のファンを増やすべく、ビギナー向けの解説付き公演を定期的に行っている。ナビゲーターとして上方落語家の桂吉坊を迎え、時には五耀會のメンバー達もマイクを握り、上演の合間に日本舞踊の決まり事や作品の見どころをわかりやすく教えてくれる。今回は《動物》をテーマに据え、『さるかに合戦』や、蛇と蛙がにらめっこをする『蛙』など、子供も楽しめる作品を揃えている。「日本舞踊に興味はあるけどよくわからなくて…」という人こそぜひ足を運んでほしい。(折田)



◆《花形・名作舞踊鑑賞会》

8月22日(国立劇場小劇場)

◇若手・中堅が歌舞伎舞踊の名作を演じる毎年恒例の国立劇場の夏の公演。今回のメンバーと演目選定もバランスよく、その舞台成果に期待が寄せられる。今年の特徴は、ほとんどの演者がそれぞれもっと若い頃に手がけた経験がある演目だということ。当時は無我夢中で形を追うのに精一杯であったり、歯が立たなかったり、思い入れが強すぎて空回りしてしまったり…という過去から時を重ね、色々なことが見えてきた今、再びその演目にチャレンジするということが意義深く、どれも見逃せないものになるだろう。

12時30分開演の部:『年増』若柳美香康、『身替座禅』尾上菊之丞、若柳吉蔵、花柳寿々彦、藤間蘭翔、藤間翔央、『供奴』市山松扇、16時開演の部:『鷺娘』市川ぼたん、『将門』花柳せいら、花柳典幸、『山帰り』藤間達也。(阿部さとみ)


◆JAPON dance project 2018 x 新国立劇場バレエ団『Summer/Night/Dream』

8月25、26日(新国立劇場中ホール)

◇国際的に活躍する日本人ダンサー、振付家が新国立劇場に集い、2014年に第一回公演『CLOUD/CROWD』、2016年に第二回公演『Move/Still』と、隔年で行われてきたJAPON dance projectが、今年の夏も上演される。今回は、これまでの抽象的なテーマとは異なり、シェイクスピアの『真夏の夜の夢』を基に創作するという。とはいえ、これまでも高い技術と洗練された構成、振付で毎回観客を魅了してきたメンバーが、単なる物語作品を踊るわけがない。タイトル『Summer/Night/Dream』に込められた「/(スラッシュ)」は、物語をどのように解体、飛躍、発展させるのだろうか。メンバーは遠藤康行、小池ミモザ、柳本雅寛が中心となり、新たに服部有吉(元ハンブルグバレエ団)、津川友利江(元カンパニー・プレルジョカージュ)の海外組を迎え、新国立劇場バレエ団からは米沢唯、渡邊峻郁、池田理沙子ら10名が参戦する。美術の長谷川匠、衣装のミラ・エック、照明の足立恒も加わり、今までにないダンス、見たことのない空間が出現するに違いない。(稲田)




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