March 31, 2016
【ダンス・タイムズがお勧めする 2016年4月公演】
【ダンス・タイムズがお勧めする 2016年4月公演】
ダンス・タイムズ編集部が選んだ来月のお勧め公演をご紹介します。あくまでもメンバー個人の予想に基づいていますので、公演の内容を保証するものではありません。ぜひ、観客の皆様が劇場へ行ってご確認ください。また、3月20日時点の情報を基にしていますので、日程、出演者、演目等が変更される場合もあります。完売の場合もありますので、事前にご確認ください。
ダンス・タイムズ編集部が選んだ来月のお勧め公演をご紹介します。あくまでもメンバー個人の予想に基づいていますので、公演の内容を保証するものではありません。ぜひ、観客の皆様が劇場へ行ってご確認ください。また、3月20日時点の情報を基にしていますので、日程、出演者、演目等が変更される場合もあります。完売の場合もありますので、事前にご確認ください。
◆貞松・浜田バレエ団 《ラ・プリマヴェラ〜春》
2016年4月1日(兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール)
◇ベテランから若手まで、ダンサー層の厚さを誇る貞松・浜田バレエ団ならではの多彩かつ盛りだくさん!なガラ公演。第1部が『ラ・ヴィヴァンディエール』『海と真珠』『海賊』キミホ・ハルバート振付の『AGUA』、第2部が『エスメラルダ』『ラ・フィユ・マル・ガルデ』『タリスマン』『白鳥の湖』第3幕 黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ、そして第3部は、プリマの瀬島五月とパートナーのアンドリュー・エルフィンストンを主役に据えた『ライモンダ』というラインアップだ。踊り手のテクニックや表現力、そしてそれぞれの作品の魅力を存分に味わいたい。(宮本珠希)
◆《NHKバレエの饗宴2016》
2016年4月10日(NHKホール)
◇日本を代表するバレエ団が一堂に会し、それぞれ十八番の作品で火花を散らす本公演を心待ちにしているバレエファンは多い。今回バレエ団の参加が3組と少なかったことは残念だが、「マニュエル・ルグリプロデュース 未来のエトワールたち」と題した特別企画が新たに加わり、オーディションで選抜された10代のダンサー達が、ルグリの指導のもとブルノンヴィル振付の『ゼンツァーノの花祭り』と『ナポリ』を披露することとなった。注目はスターダンサーズ・バレエ団で、昨年バレエ団の公演で好評を博したチューダー振付の『リラの園』を再演する。間を空けず再演することで作品をどこまでブラッシュアップできているか期待したい。他に小林紀子バレエ・シアターの『レ・ランデヴー』と谷桃子バレエ団の新作、橋本清香&木本全優と平田桃子&セザール・モラレスの二組によるパ・ド・ドゥ。(折田彩)
◆2016年4月舞踊・邦楽公演《明日をになう新進の舞踊・邦楽鑑賞会》
2016年4月舞踊・邦楽公演《「明日をになう新進の舞踊・邦楽鑑賞会」特別公演》
2016年4月17, 18日 (国立劇場 小劇場)
◇「明日をになう新進の舞踊・邦楽鑑賞会」は国立劇場主催の新進気鋭の舞踊家・邦楽家による公演。今年は西川申晶と花柳智寿彦の二人。どちらも地道に堅実に努力を重ねてきた女流舞踊家だ。『鐘の岬』(西川申晶)は道成寺物の一つで、歌舞伎舞踊とは異なり、装飾を削ぎ落として、しっとりとした情緒の中に恋心と鐘への恨みを描く。折り目正しい舞踊に定評のある演者が、さらに磨きをかけた舞台を展開することだろう。
『河』(花柳智寿彦)は昭和の名曲。隅田川周辺の風物を春の早朝から夕方にかけての時間軸で綴る。整った所作と確かな表現力を持つ演者が、曲の味わいを描写する舞台に期待が寄せられる。
◇「特別公演 春の舞踊・邦楽鑑賞会」は上記「明日をになう新進の舞踊・邦楽鑑賞会」を卒業した「現在をになう」邦楽家・舞踊家による公演。今回は春に因んだ作品を並べた。舞踊は『梅道成寺』『女戻駕』の二題。『梅道成寺』(西川祐子)は 一般的な道成寺物が桜をモチーフとしているのを、梅に置き換えたもの。男の真心を疑う心から恋の妄執を見せる。師・花柳茂香が創作した作品で、祐子は今まで何度も手掛け安定した力を発揮しているが、今回も美しいラインでその世界を描いてくれることだろう。
『女戻駕』は、『戻駕』という天明期の名曲を女バージョンにした江戸の遊び心ある舞踊。近年は上演頻度の少ない曲だが、なんと先月歌舞伎座で上演されたばかり。しかし、歌舞伎界と日本舞踊界に伝わるものとでは、設定が異なる面白さがある。ちなみに歌舞伎では吉原のイベントで芸者が駕かきに扮するが、こちらでは元大坂の太夫(位の高い遊女)と吉原の局見世の遊女(下級の遊女)が落魄して駕かきになったというもの。若柳庸子、市山松扇、泉翔蓉、中堅の3人の実力者が腕を競う洒落た舞踊である。(阿部さとみ)
◆《第31回 岡田昌巳スペインを踊る》 『タラント! 銀山の唄』
2016年4月25, 26日(新国立劇場 小劇場)
◇70年代の終り頃、スペイン仕込みの超絶技巧で観客をうならせた岡田昌巳は、しだいに情念の立ち込めるドラマの主人公を演ずるようになった。96年の『KUROZUKA』、98年の『オイディプスと妃イオカステ』、2002年の『フリーダ・カーロ』などの佳作がある。さらに彼女は、自分の踊る楽しみに忠実に従う時代へと進む。70歳を過ぎて、2012年の『一輪のマルガリータ』、13年の50周年記念公演《岡田昌巳スペインを踊る》などの余裕たっぷりの舞台さばきは、見る者に人生の楽しさを教えた。しかし、その後彼女はからだの不調に苦しむ。15年のモダンダンス5月の祭典で踊った『それでも踊り続ける』は、そんな彼女の叫びだった。
そうして迎えた久しぶりの舞台。彼女は何を見せてくれるのだろう。(山野博大)
そうして迎えた久しぶりの舞台。彼女は何を見せてくれるのだろう。(山野博大)
◆勅使川原三郎 『シナモン』
2016年4月28-30日, 5月1日 (シアターχ) (吉田)
◇2013年より言葉とダンスの関係を追及している勅使川原。メインとなる材料はポーランドの作家ブルーノ・シュルツの作品だ。今回は、シュルツの短編集『肉桂色の店』(15編収録)からの抜粋で構成される。精神を病んだ父親をモチーフに、装飾語がたたみかける美しくもグロテスクな世界。ダンサーはシュルツの言葉を如何に身体に刻むのだろうか。 (吉田 香)
◆笠井 叡 『オイリュトミー版「日本国憲法を踊る」』
2016年4月28日 (国分寺市立いずみホール)
◇2013年10月、BankARTで初演された、笠井叡による『日本国憲法を踊る』には圧倒された。その際に書いた拙文は、「何の装飾もない舞台に一人立ち、背後に立つ若い女性三人が明治憲法、日本国憲法等々を朗唱する言葉と音を浴びながらの踊りである。紛れもなく日本の文化と歴史に根差しながら、西欧の芸術、思想に触発されて舞踏家として歩んできた笠井の人生が、そこに凝縮されていた。憲法は、裁判官(検事だったか?)であり早くに亡くなった父へのオマージュであり、現代に生きる笠井のこだわりでもあろう。わが身を削り、さらけ出す圧巻の踊りと、最後に放屁するスケール感は、誰にもまねのできないものである」だった。この作品を、笠井のもう一つの柱であるオイリュトミーで上演するという。言葉と踊り、思想と身体がどのように変化しつつ再び現れるのか、その場に立ち合い、見てみたい。(稲田奈緒美)
◆東京バレエ団 『ラ・シルフィード』
2016年4月29, 30日 (東京文化会館)
◇東京バレエ団の『ラ・シルフィード』は、ピエール・ラコット版。1971年にテレビ版として制作され、翌年パリ・オペラ座で初演された。伝説のフィリッポ・タリオーニ版の資料をもとに制作された本作は、お馴染みのブルノンヴィル版とは音楽、振付ともに異なる。ポアントワークを本格的に取りいれた最初のバレエと言われ、振付家の娘マリーを一躍有名にした。また、シルフィードは斎藤友佳理芸術監督の現役時代の当たり役である。2月に上演された『白鳥の湖』に続き、今回も深く掘り下げられた見応えのある舞台になるだろう。(隅田 有)
◆スターダンサーズ・バレエ団 『白鳥の湖』 (全1幕) / 『迷子の青虫さん』
2016年4月29日 (テアトロ・ジーリオ・ショウワ)
◇日本の創作バレエ史上に残る人気作『ドラゴン・クエスト』を手がけたすぎやまこういちと鈴木稔の作曲・振付コンビが、この度新しく、子供向けの新作『迷子の青虫さん』を創作する。果たして鈴木は、足のない青虫の動きをバレエのステップでどのように表現するのだろうか。すぎやまが10代の頃に作曲した瑞々しい音楽とディック・バードの舞台美術・衣裳デザインも含めて、期待は高まるばかりである。解説付き、全1幕の『白鳥の湖』が同時上演。(折田)
◆奥山ばらば『うつしみ』
2016年4月29, 30日, 5月1日 (大駱駝艦・壺中天)
◇麿赤兒率いる大駱駝艦では、カンパニーとしての公演のほか、本拠地のスタジオ兼劇場の壺中天で、ダンサーたちが次々と公演を行っている。厳しい肉体トレーニングと、麿やその他のメンバーの作品に出演しながら鍛えられた作品構成力、振付力、総合的な演出力が光る作品ばかりだ。今回は、奥山ばらばによる振付(大駱駝艦用語では「振鋳」という)・演出・美術・踊り(「鋳態」)の『うつしみ』である。今という時代を生きる彼が、踊ることでどのような“現身”として姿をあらわすのだろうか。「ダンス・タイムズ選出による月間ベストダンサー」の常連である、我妻恵美子、鉾久奈緒美らがスタッフとして仲間を支えるのも心強い。(稲田)
◆《第八十七回 錦会》
2016年4月29日 (国立劇場 大劇場)
◇毎年恒例、花柳錦之助・典幸の一門の会。錦之助は『紀州道成寺』『蝶の道行』、典幸は『男女道成寺』『江戸風流』『二人猩々』に出演。『蝶の道行』は、家同士が不仲な恋人同士(助国と小槙)が、それぞれ仕える家の若殿と姫の身替りとなって死に、番いの蝶となって冥土への道行をするというもの。助国は優しい風情を持つ武士で錦之助にはぴったりの役どころ。『紀州道成寺』では悪霊に立ち向かう高僧役で脇をしめる。
『男女道成寺』は最初は『京鹿子娘道成寺』と同じ扮装をした二人の白拍子が登場。後に一人は狂言師の男だとばれて…と展開。二人で踊り分けていく。この狂言師に典幸が扮する。北斎の絵をモチーフとした風景を綴る『江戸風流』、酒好きの架空の動物・猩々(しょうじょう)が二人登場するおめでたい曲『二人猩々』と、兄弟共に単独での出し物はなく、門弟と共に踊る。自分の役をきちんと演じつつ、門弟を見守り、時には導きつつ・・・と、両方の触角が求められ、リサイタルとは違った側面を見る事ができる。(斎藤真帆)