November 23, 2015

Dance Dance Dance at YOKOHAMA :バットシェバ舞踊団『DECADANCE-デカダンス』

オハッド・ナハリン率いるイスラエルのバットシェバ舞踊団が三年ぶりに来日した。今回上演したのは、これまでにナハリンが生み出した作品のダイジェスト版『DECADANCE-デカダンス』である。“退廃”を意味する“Decadence”ではなく、ギリシャ語で10を表す“Deca”と“Dance”を組み合わせており、ナハリンの監督就任10周年を記念して2000年に初演された。

黒いスーツを着て椅子に座ったダンサーが次々と倒れる『Anaphase(アナフェイズ)』、観客をステージに上げて踊る『Zachacha(ザチャチャ)』等のおなじみの作品に加えて、日本初お目見えのものもあり、まさに好いとこ取りで、最後まで目が離せない。なかでも終盤に17人のダンサー全員が次々とカンパニーのボキャブラリーを見せていく場面が圧巻だ。関東での公演は1回きりということもあり満員で、老若男女入り混じった観客のスタンディング・オベーションが繰り広げられる中、熱狂のうちに幕を閉じた。

この作品を通して、バットシェバを、そしてナハリンの作品を俯瞰してみると、どうにも敬服せざるを得ない。どの場面も、どこかで見たような既視感のあるコンセプトやボキャブラリーはない。コンテンポラリー・ダンスの不振が言われる現在、これはまったく稀有なことである。そして、どの作品も、ダンサー全員がきちんとしたテクニック(GAGA)を身に着けて、国内外で年間250以上の公演を行って研鑽を積んでいるからこそ成り立つというのが明らかだ。しかも、その優れたテクニックや身体性を見せつけるのではなく、ユーモアを交えつつ、人間の身体、ひいては人間そのものに対する温かい眼差しが貫いている。また、中東を思わせる音楽が所々で使われており、歌詞は全く理解できないが、不思議な程懐かしさを感じさせる。

バットシェバのダンスは、境界を超えてユニバーサルに魂を揺らす。紛れもなく世界のリーディングカンパニーであることを再認識した舞台であった。

(吉田 香 2015/10/4 神奈川県民ホール大ホール)

jpsplendor at 22:49舞台評 
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