May 29, 2012

金沢芸術創造財団・日本洋舞連合主催《KANAZAWA STEP UP CONCERT DANCE-STAIRS 2012》

 金沢芸術創造財団と日本洋舞連合(会長=中村祐子)の主催による《KANAZAWA STEP UP CONCERT DANCE-STAIRS 2012》が行われた。このコンサートは、毎年定期的に金沢市で行われている新人舞踊作家の育成を目的とした《セルフ・コレオグラフ・ダンス・コンペティション》の受賞作品の紹介をメインとしたもの。しかしまだこれからという人たちの舞台だけでは、観客動員がままならないので、先輩舞踊家有志によるプログラムをプラスして、舞台の賑わいを高めるという制作面の配慮がなされていた。
 この舞台で紹介された次代の活躍を期待される舞踊家は《2011年受賞者》の富士奈津子、天野頌子・服部夏海、上野彩奈、《2012年受賞者》の横山千穂、斉藤結依、高橋茉那、中村香耶、井上みな、新保恵の9組。
 プラスのプログラムは、日本洋舞連合傘下の中村祐子モダンバレエアカデミー、アルス・ダンシング・メイツ、金井桃枝舞踊研究所、松岡ジャズバレエ研究所、白楊モダンダンス研究会、前田敬子・田中勉バレエ教室の6団体による《フリーステージ》だった。
 新人たちの舞台は、どれも著しい進歩のあとの見える出来栄えだった。将来の活躍をもくろんだこのような公演の効果が明らかに見てとれた。特に目立ったのは、『私を殺したいなんて思わないで〜』の富士奈津子、『人間の譚詩曲』の高橋茉那、『みみもとの存在』の新保恵、『瑠璃色』の中村香耶だった。富士の奇想天外な発想を現実化した舞台づくり、高橋の力強い動き、新保のデュエットを仕上げた振付の力量、中村のゆったりと大らかな動きのみごとさは、いずれも同年代の舞踊家の水準を大きく超えるものだった。他の横山千穂、斉藤結依、井上みな、天野頌子・服部夏海、天野頌子・服部夏海、上野彩奈も、それぞれにしっかりとした個性を持った有望な舞踊家たちであり《セルフ・コレオグラフ・ダンス・コンペティション》の選者の目が確かだったことを示した。
 《フリー・ステージ》では、中村祐子モダンバレエアカデミーの『雲の上から』の日本的叙情、金井桃枝舞踊研究所の『珍道太鼓』の民族舞踊に対する真摯な取り組み、アルス・ダンシング・メイツの『虹を超えて』のジャズの整然たる大群舞は注目に値した。
 また松岡ジャズバレエ研究所のジャズダンスとバレエに取り組む熱心な姿勢、白楊モダンダンス研究会のかわいらしい子供たちの演技、前田敬子・田中勉バレエ教室の楽しい舞台づくりも、それぞれに客席をわかせた。
 この種の公演は、ただ並べて見せればよいということになりがちなのだが、この《KANAZAWA STEP UP CONCERT DANCE-STAIRS 2012》では、映像をうまく使った軽快な舞台進行が効果的だった。観客をあきさせずに、最後まで見せようとする努力を惜しんでいないのだ。またこの公演は行政も相応の支援を行っているとのことだった。とかく文化予算に厳しい昨今だが、さすがに文化都市金沢は違う! 次の世代を育てようという民間の努力に行政当局が応えている。うれしいことの多い公演だった。
(山野博大 2012/05/27 金沢市文化大ホール)



emiko0703 at 15:54短評 
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