February 07, 2012

遠藤展弘の死を悼む

バレエの遠藤展弘が亡くなったとの知らせが1月22日の深夜もたらされた。彼は1935年8月25日生れだから、享年77。早すぎるとの想いで訃報を聞いた。
 彼は橘秋子に師事し、バレエの世界へ入った。橘スタイルの、冬の滝修行などもある厳しい訓練に耐え、たちまちのうちに彼女の作品に欠かすことのできない男性ダンサーのひとりとなった。とりわけ彼のサポートのうまさはばつぐんで、他の追随を許さなかった。当時、仲間うちでは「脚が短い分、安定が良いのね」と言い合ったものだが、確かに彼のバレリーナ扱いのうまさには、感心することしばしばだった。
 ダンサーとして、教師として優秀だったばかりでなく、彼は事務的なことにも長けていて、最後は日本バレエ協会の専務理事という多忙な職務についた。けっして偉ぶらず、控え目な態度を崩さなかったけれども、バレエに対する強固な意志を内に秘めていた。目立ちたい人の多い舞台人の中にあって、彼の落ち着いた立ち居振る舞いは、周囲に良い印象を与え続けた。私は60年以上も、親しくしてもらったわけだけれども、彼の周囲に立ちのぼる温和な雰囲気が変わることはなかった。
 バレエ界はまたひとりの大事な人を失ってしまった。あの世は、無用な気配りなどと無縁な世界のはず。安らかに眠ってくれることを切に願う。合掌。
(山野博大 2012/01/22 )



emiko0703 at 22:48レポート 
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