February 07, 2012

舞踊家たちの集う《まよい句会》新年句会

舞踊関係者で作る《まよい句会》は、すでに四半世紀ほどの歴史を経ているのだが、会員の俳句の力量は、いまだにはなはだ心もとないものがある。その新年句会が神楽坂の阿ら井で行われた。この店の主は、長らく浅草で幇間をやっていたという人物。いずれも高齢の参会者たちを「お兄さん」「お姉さん」と呼んでくれるので、一同大いに気を良くしての句会となった。
 事前に出してある兼題の「雑煮、初夢、独楽」の言葉を使って句づくりを行い、事前に宗匠宛に郵便またはファックスで投句したものを書き並べた一覧(清記)から、各人が選句を行い、その多寡により順位を競う。このあたりは一般の句会と何ら変わるところはないのだが、問題はその中身である。
 この日集まった面々は、モダンダンスの藤里照子、バレエの雑賀鈴水(雑賀淑子)、日舞の花柳面、中国現代舞踊の大谷けい子、「舞踊芸術」社長の井上道代、それに雑賀さんの友人の植村由加里、桜町多恵、嶋本秀朗(シャンソン歌手)と山野博大の9名。舞台衣裳デザイナーの光尾秀、モダンダンスの山田奈々子は欠席だったが、句を届けてくれた。
 投句は全部で50句ほど。トップ賞は7点を集めた井上道代の「初夢や亡き人達とめぐり逢い」となった。高齢ながらなお現役として活躍する井上さんならではの句だ。これに花柳面の「独楽回し天地を軸にゆるぎなく」、雑賀鈴水の「初夢はなんだったっけ二日酔い」「ベーゴマも昭和も遠くなりにけり」の4点句が続いた。さらに3点句の、山田奈々子の「くるくるとまわって生きて五重奏」、雑賀鈴水の「お雑煮もあといくたびか春過ぎぬ」、嶋本秀朗の「初夢や出番も多き亡き恩師」の3句、2点句の、光尾秀の「初夢のどこでどきどきしたのやら」「おまへんか初夢くらい良きことが」、大谷けい子の「笑み浮べ初夢みる児に幸あれと」、桜町多恵の「故郷の雑煮談義に花が咲く」「子沢山母はせわしく雑煮椀」「餅の数競い合いたり幼き日」、大谷けい子の「おどろいた博多の雑煮はあんこもち」、雑賀鈴水の「初夢はねェみたのも忘れる老の春」、花柳面の「海老抜いてしずしず喪中の雑煮喰ふ」、藤里照子の「珍しく独楽まわす子あり立ち止まる」「初夢を見るぞと早寝夢はなし」、山野博大の「ちょっと待て独楽の勝負に親が出て」が並んだ。一般の句会だと、ここで新たに席題を出し、それで句を作って再び清記、選句とやるのだが、まよい句会はそんな野暮なことはしない。にぎやかなおしゃべりに昼のお酒もちょっと入り、新年句会はめでたく終了と相成った。
(山野博大 2012/01/20 阿ら井)



emiko0703 at 22:43レポート 
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