June 18, 2011

安藤洋子『REACTING SPACE FOR DIVIDUAL BEHAVIOR』 平川典俊『BEYOND THE SUNBEAM THROUGH TREES』

6月6日、宇野萬氏の案内で山口情報芸術センターで開催中の安藤洋子の『REACTING SPACE FOR DIVISUAL BEHAVIOR』と平川典俊の『BEYOND THE SUNBEAM THROUGH TREES』を見せてもらった。



 安藤洋子の作品は、センターの入口すぐのホワイエに展示されていた。いくつかの小さな舞台が乱雑に散らばっていて、その周囲にカメラ、モニターなどの映像機器が雑然と置いてある。舞台へは誰でも気軽に上がってよい。上がると、その様子がモニターに映し出される。
 小さな舞台上には、目には見えないが何かセンサーが働いているらしい。大きなモニターに四角い箱のようなものが写っており、舞台に上がった人がそれに触れると、異変が起こる仕掛になっている。宇野氏の話によると、安藤洋子は舞台上のセンサーの位置をしっかりと把握していて、どこまで動いたら四角い箱に触れるかを把握しているらしい。からだをくねらして回避行動をとり続けていると、その動きを知らずに見ている者には、それがちゃんとしたダンスに見えてしまうのだそうだ。他の小さな舞台には、触れると音が出る仕掛があり、ここではダンスに応じて、さまざまな音が聞こえてくる。また別の舞台に上がると、機械がその人物の骨格を読み取ってモニター上にダンスの軌跡を描き出す。
 機械と人間の触れ合いの結果として、即興的なダンスが現われる。機械の受け持つ部分がはっきりと存在して、人間の相手をしてくれる。ダンスは人間だけが創れるものという前提がゆらいでくるところがおもしろい。
 照明と映像のコントロールを厳密にやり、それをダンサーにフォローさせ、あたかも機械と人間が共同で創作活動をやっているように見せる作品がいろいろとある。しかしこの安藤洋子の『REACTING SPACE FOR DIVISUAL BEHAVIOR』には、機械が受け持つ部分がある。ダンスの概念を拡張することになりそうなこの実験には、たしかに一見の価値がある。

 暗い部屋に入ると、その奥に白い下着のような衣裳を着た安藤洋子が立ち、木漏れ日の中で少しづつ動いているのが見える。それが平川典俊という現代美術家が作った『BEYOND THE SUNBEAM THROUGH TREES』だった。暗さに慣れてくると、安藤洋子本人がそこにいるのではなくて、映像なのだということが分かる。映像には立体感があり、リアリティーがある。透明なスクリーンで部屋のように囲まれている四面の外側にそれぞれ映像は見えている。正面には安藤の正面が、右にはその右の姿が、左にはその左が、そして後には彼女の背面が写っている。どこから見ても、彼女のすべてを見ることができる。映像の不思議に生々しい質感は、何かが起こりそうな可能性をはらんでいる。これはいったい何なんだろうという、興味がわいてくる。

 山口情報芸術センターでは、次の時代の芸術を探るさまざまな試みをやっている。安藤洋子と平川典俊の作品もそのひとつというわけで、何かが変わって行きそうな予感をはらむ、未来へとつながる仕事だ。こういう仕事は、直ちに多くの観客を呼べるような、いわゆる確かな効果が期待できるようなものではない。これは未来への投資なのだ。
 今の劇場が備えるテクノロジーを前提とした舞台芸術が、意味を失ってしまう可能性さえ感じさせる安藤洋子の『REACTING SPACE FOR DIVISUAL BEHAVIOR』と平川典俊の『BEYOND THE SUNBEAM THROUGH TREES』の展示は、8月21日まで。午前10時から夕方7時までやっている(火曜休館)。未来が身近に感じられる体験にひたってみてはいかが。入場は無料だ。

(山野博大 2011年5月28日〜8月21日/山口情報芸術センター  ※火曜休館)



emiko0703 at 13:11公演の見どころ 
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