March 20, 2011

スターダンサーズ・バレエ団『振付家たちの競演』

 このたびの震災により数々の被害にあわれた方々に心よりお見舞い申し上げます。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、一日も早い復興を願うばかりです。

 東京でも地震による交通機関のマヒ、電力不足、余震への懸念などから多くの公演、イベントが中止、または延期になっている。多くの人が集う劇場では、その判断もやむを得まい。一方で、公演を予定通りに行っているカンパニー、劇場も少数ではあるが存在する。

 スターダンサーズ・バレエ団は、地震翌日の312日(土)と13日(日)に、予定通り公演を催した。開演前に主催者から「苦渋の決断」であったことが観客に向けて直接語られた。様々な責任、リスクを承知の上で、しかし、誰かが始めなければならない、という厳しい選択であっただろう。筆者は13日(日)に見たが、客席は空席が目立った。しかし、家に篭っていても気がめいるばかりなので、思い切って出かけてきたと語る人もいたし、このようなときだからこそ、真摯に表現し、思いを伝えようとするダンサーたちの姿勢に、勇気付けられた人もいたようだ。

 作品は、遠藤康行の振付による「love love Robot幸せのジャンキー」、佐藤万里絵による「Heaven Seven」、鈴木稔の振付による「幸福の王子」の三本である。遠藤作品は、小編成のライブ演奏を背景に、無機的な動きのロボット、何ものかにとらわれ、翻弄され易い人間の弱さ、醜さなどを対比的に描いた。ダイナミックなソロやデュオ、一斉に並んでの迫力あるユニゾンなどがあったが、少々詰め込みすぎ。焦点を絞ってシンプルにした方が、伝わりやすいのでは。佐藤は、初めての振付にしては上出来。独自のスタイルを探っていくのはこれからだが、身体の動きに応じた空間の配置、シーンのつなぎ方などにセンスが光るものがあり、これからが楽しみだ。鈴木作品は、オスカー・ワイルドの原作を元にした物語バレエ。『ドラゴン・クエスト』や『シンデレラ』で見せたように、鈴木は、エンターテインメント性と現代性、叙情やファンタジーを振付、演出に巧みに盛り込んで、奥行きのある物語を伝えることができる振付家。ショパンのピアノ曲を効果的に用いた、王子(大野大輔)の象徴的な身振り、ツバメ(福原大介)の軽やかさが印象的だが、ツバメは、むしろ優雅過ぎるくらい。三作品とも、ダンサーはみな初演と現在の状況というプレッシャーをはねのけて、集中力と緊張感を維持しながら、しっかりとしたバレエの技術に基づく明確な踊りを見せた。公演開催を決断し、成功させた関係者すべてに拍手を送りたい。(稲田奈緒美 2011/3/13 14:00 @ゆうぽうと)

 



inatan77 at 00:42短評 
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