February 28, 2019

【ダンス・タイムズがお勧めする 2019年3月公演】

ダンス・タイムズ編集部が選んだ来月のお勧め公演やイベントをご紹介します。あくまでもメンバー個人の予想に基づいていますので、公演の内容を保証するものではありません。ぜひ、観客の皆さまが劇場へ行ってご確認ください。また、220日時点の情報を基にしていますので、日程、出演者、演目等が変更される場合もあります。完売の場合もありますので、事前にご確認ください。

 

【ダンス・タイムズがお勧めする 2019年3月公演】


◆NBAバレエ団『白鳥の湖』

2019年3月2、3日(東京文化会館・大ホール)

◇次々と新作を送り出し、勢いに乗るNBAバレエ団が、いよいよ『白鳥の湖』(久保紘一版)に臨む。オデット/オディール(一人二役)にアリーナ・コジョカルと平田桃子、コジョカルの相手役の王子にはエルマン・コルネホをゲストに迎える。コジョカルと平田は、テクニック、表現ともに折り紙付き。コルネホは、これぞラテンといったダイナミックなジャンプや回転が持ち味だが、年齢を重ねた今、王子役をどう魅せてくれるのか、非常に楽しみである。編曲はおなじみの新垣隆、そして、改訂振付には宝満直也の心強いサポートがある。役者は揃っている。あとはどこまでプロダクション全体の精度を上げられか、見ものである。(吉田 香)


◆新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』

2019年3月2〜10日(新国立劇場・オペラパレス)

◇牧阿佐美の手がけた数々の全幕バレエの中でも、特に評価が高い本作。各幕ごとのバランスがよく、ラストの神殿崩壊までテンポよく進む。二枚看板の小野と米沢がニキヤとガムザッティを務めるファーストキャストなど、魅力的な3キャスト。幻想的な「影の王国」は、新国立劇場ならではの洗練されたコール・ド・バレエを堪能したい。(隅田有)


◆熊川哲也Kバレエカンパニー『カルメン』

3月6〜21日(Bunkamuraオーチャードホール / 東京エレクトロンホール宮城 / けんしん郡山文化センター)

◇熊川版『カルメン』は2014年の初演。16年に再演し、今回はさらに改訂を加えての上演となる。完成度を上げた舞台には、矢内千夏、中村祥子、荒井祐子、毛利実沙子の4人のカルメンが登場する。誰を見るのか大いに迷うところ…。(山野博大)


◆マニュエル・ルグリ《Stars in Blue BALLET & MUSIC》

2019年3月8〜9、11、14、17日(東京芸術劇場、ザ・シンフォニーホール、メディキット県民文化センター、愛知県芸術劇場)

◇世界の第一線で活躍するバレエダンサーと音楽家との共演が実現。言わずと知れたバレエ界の至宝マニュエル・ルグリの元に集まるのは、ボリショイ・バレエ プリンシパルのオルガ・スミルノワ&セミョーン・チュージン、ハンブルク・バレエ団 プリンシパルのシルヴィア・アッツォーニ、そしてヴァイオリニストの三浦文彰、ピアニストの田村 響。パトリック・ド・バナによる、アレッサンドロ・バリッコ原作の『絹』から想を得た世界初演作品『OCHIBA〜When leaves are falling〜』を始め、ウヴェ・ショルツ、ローラン・プティ、ジョン・ノイマイヤーなど巨匠の作品が名を連ねる。トップアーティスト同士から生み出される唯一無二の化学反応を堪能したい。(宮本珠希)


◆牧阿佐美バレヱ団《プリンシパル・ガラ2019》

2019年3月16、17日(文京シビックホール・大ホール)

◇1月にウラジオストックで『飛鳥』を上演し、好評を博して帰国した牧阿佐美バレヱ団の《プリンシパル・ガラ》だ。このプログラムには、ウラジオストックのガラ・コンサートで大人気だった『グラン・パ・ド・フィアンセ』も入っている。この小品は、『白鳥の湖』のお妃選びの場面をジャック・カーターがテクニカルな見せ場に仕立てた逸品。久しぶりの上演が待たれる。(山野)


◆チャイコフスキー記念東京バレエ団『海賊』

2019年3月15〜17、21、23日(東京文化会館・大ホール、オーバード・ホール、兵庫県立芸術文化センター)

◇マリウス・プティパ生誕200周年を記念する“プティパ・イヤー”のラストを飾るのは、バレエ団初演となるアンナ=マリー・ホームズ版『海賊』だ。男性舞踊手の見せ場がふんだんに盛り込まれた同作は、プリンシパルを始め、今まさに踊り盛りのダンサーが揃い踏み!また、団内オーディションにて選出された若手もソリストデビューを飾るなど、適材適所のキャスティングも大きな魅力である。先日行われた公開リハーサルでも、バレエ団内に漲る熱量、その充実ぶりを存分に伺うことができた。初日の幕開きが待ち遠しい。(宮本)


◆現代舞踊公演《1200seconds 〜踊〜 Triple Bill》

2019年3月19、20日(東京芸術劇場・プレイハウス)

◇現代舞踊協会は、毎年都民芸術フェスティバルに参加し、東京芸術劇場プレイハウスでトリプル・ビルを行っている。プレイハウスの奥行きと舞台機構を活かし、小劇場では難しい、凝った装置や大人数のダンサーを使った作品作りができる貴重な機会だ。今回は《1200seconds》、つまり20分の上演時間での創作に、現代舞踊の木原浩太と飯塚真穂、フラメンコの平富恵が挑む。木原は、Co.山田うんの中心メンバーとして活動し、ソロやデュオでの創作も積極的に行っている現代舞踊界のエースだ。今回は29名の女性ダンサーを率いる。飯塚は昨年の《新進舞踊家海外研修員による現代舞踊公演》での『Winter』の好演が印象に残る。平も昨年秋に自身の舞踊団の10周年記念公演を成功させたばかり。実力者3人が20分のなかで凝縮した表現を見せてくれるだろう。(折田 彩)


◆スターダンサーズ・バレエ団《Dance Speaks》『緑のテーブル』

2019年3月30、31日(東京芸術劇場・プレイハウス)

◇20世紀の傑作『緑のテーブル』(振付クルト・ヨース)が14年ぶりに再演される。 1901年生まれのヨースはラバンに学び、ピナ・バウシュ、ギルビット・クルベリ、ピーター・ライトなど、そうそうたる振付家が彼のもとで踊った。反戦と政治批判という、決してダンスが得意としないテーマを、風刺の効いた手法で描き上げた、奇跡のような作品。まもなく第二次世界大戦になだれ込むという時代に放たれたアイロニーは、各地で紛争が続く現代にも鋭く突き刺さる。同時上演の『ウェスタン・シンフォニー』は、西部劇が好きだったバランシンの手による文句なく楽しいバレエだ。(隅田)


◆《踊狂いの五十年 花柳園喜輔記念舞踊会》

2019年3月30、31日(国立劇場・大劇場)

◇花柳園喜輔はベテランの男性舞踊家。平成二十八年度の芸術祭では一人で様々な役柄を何役も演じる七変化の舞踊で優秀賞を授賞。芸域の広さがうかがい知れた。その園喜輔が初めての舞踊会開催から五十年を迎え、集大成ともいうべき舞踊公演を開く。二日間のうち初日はリサイタル風に全五番。園喜輔は松賀藤雄、松島金昇と共に『式三番叟』、子息・悠との『末広かり』、一世一代の心で『京鹿子娘道成寺』の三番を踊る。二日目は門弟を中心とした公演で、全二十二番。園喜輔は『花と柳』『熊野』『お祭り』に出演。日本舞踊を狂おしいほどに愛した園喜輔の舞踊公演に期待が高まる(阿部さとみ)


◆島根が生んだ石田種生の世界『白鳥の湖』

2019年3月31日(島根県民会館・大ホール)

◇東京シティ・バレエ団創設者の一人で、ダンサー、振付家として国内外で活躍した石田種生(1929-2012)。東京や韓国ではその名が知られているが、彼の郷里、島根県では名前を知る人も少なくなった。石田は西洋の物まねだけではない、日本のオリジナルバレエを数多く振り付けたが、その際に用いたのはステレオタイプな日本イメージではなく、故郷島根で自身が体験してきた郷土芸能、民俗舞踊を含めた幅広い日本の生活に根差した文化であった。東京シティ・バレエ団がレパートリーとし、一昨年も藤田嗣治の舞台美術を用いて話題を集めた《白鳥の湖》では、たとえば白鳥たちの群舞のフォーメーションは西洋的なシンメトリーではなく、日本庭園にみられるようなアシンメトリーに構成され、また、群舞一人ひとりまでが劇的な表現を担う生き生きとした作品になっている。そのような石田を顕彰し、故郷の人々が誇りに思い、自らの生活文化の豊かさを再発見してもらうための試みとして、「島根が生んだ石田種生の世界実行委員会」が結成された。数年かけて準備を重ねてきた成果が、3月31日に松江市にある島根県民会館で上演される《白鳥の湖》である。主役を踊るのは、松江市出身で新国立劇場バレエ団で活躍している北村香菜恵で、その他の役も地元のダンサーたちが務める。東京シティ・バレエ団からは王子役にキム・セジョン、ロットバルト役に李悦を迎えるほか、石田の演出・振付を熟知した指導者が時間をかけて指導に当たってきた。地域に埋もれている文化資源を再発見して活かし、地域から発信する瑞々しい《白鳥の湖》になることだろう。また、28日から31日まで石田の足跡をたどる展示が、島根県民会館展示室で催され、オープニングには石田が松江のヘルン旧居に舞う雪片を見て振付たという〈風花〉のデモンストレーションのほか、筆者がレクチャーを行う。さらに、3月23日には出雲大社東神苑の特設舞台で開催される『出雲フェスティバル2019』でも《白鳥の湖》第2幕と〈風花〉が上演される。桜が咲き誇り、雲がたなびく隙間から陽光が降り注ぐ美しい島根への観光を兼ねて、公演を見てみてはいかがだろうか。(稲田奈緒美)



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