July 31, 2018

第15回世界バレエフェスティバル 記者会見レポート

三年に一度のバレエの祭典『第15回世界バレエフェスティバル』(世界フェス)。AプロとBプロがそれぞれ5公演、そして恒例の特別ガラが今年は『Sasaki Gala』の名称で、東京公演最終日の15日に上演される。Aプロの開幕が間近に迫った7月30日、東京文化会館大ホール舞台上で記者会見が開催された。主催の公益財団法人日本舞台芸術振興会(NBS)専務理事の高橋典夫氏と、特別協賛の株式会社コーセー代表取締役社長小林一俊氏の挨拶ののち、すでに来日中の出演者34名が登壇。フランス語、ロシア語、英語の通訳を交えて、一言ずつ意気込みを語ってくれた。

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二列に並べた椅子の前方に女性、後方に男性ダンサーが座る。最初にマイクを渡されたのは、パリ・オペラ座バレエ団芸術監督のオレリー・デュポン。世界フェスは「友人たち、アーティストたちと再会する場でもあり、新しい作品を発見する場でもあります」と語るデュポンは、出演者の中で最多となる7回目の出場で、世界フェスの半分近くに参加していることになる。次にマイクはパリ・オペラ座バレエ団エトワールのドロテ・ジルベールへ。意外にも世界フェスは初参加という。「たいへん大きなインスピレーションをいただける場として嬉しく思っています」と述べた。ここで、コメントを短めにとの注文が入ると、世界フェスの前夜祭ともいえる全幕プロで、7月27日の『ドン・キホーテ』に主演したミリアム=ウルド・ブラーム(パリ・オペラ座バレエ団)は、可愛らしく「pas de probleme!(ノープロブレム!)」と答える。ブラームも、さらに次のレオノール・ボラック(パリ・オペラ座バレエ団)も世界フェスは初参加。それぞれ出演できることを光栄に思っていると述べてマイクは後方の男性陣に回った。

ボラック同様に初参加のジェルマン・ルーヴェ(パリ・オペラ座バレエ団)、そしてマチュー・ガニオ(パリ・オペラ座バレエ団)とマチアス・エイマン(パリ・オペラ座バレエ団)の挨拶が続いた。ガニオとエイマンは、世界フェスの創始者であり、前回公演後の2016年4月に亡くなったNBSの元専務理事佐々木忠次氏に思いを馳せ、今回のフェスティバルは佐々木氏に捧げたいと語った。初参加のダニエル・プロイエット(ノルウェー国立バレエ団)は流暢な日本語で自己紹介をした後、フランス語で挨拶。「今回踊る作品はとても好きな作品で、オレリーと共にご紹介できることを信じられないくらい嬉しく思っています」と述べた。

再びマイクは前方に回り、ロシア語の通訳に代わる。ハイヒール姿のマリーヤ・アレクサンドロワは高い甲がひときわ引き立つ。「全てのアーティストに捧げる素晴らしいフェスティバルだと感じています。そしてまた日本の観客とお会いできることを心待ちにしています」と挨拶した。続いてアンナ・ラウデール(ハンブルク・バレエ団)にマイクを繋ぐ。「またこの舞台に立てることを嬉しく思っています」。オレシア・ノヴィコワ(マリインスキー・バレエ)は「日本文化のファン。特に日本の皆さんのお互いに対する尊敬の気持ちは、他の国ではなかなか見られないことで、大変感激しています」と日本の印象を話し、ヤーナ・サレンコ(ベルリン国立バレエ団)もまた「日本人の親切さにいつも感激しています」と語った。

ヴラディスラフ・ラントラートフ(ボリショイ・バレエ団)は「世界で最も優れたダンサーが集結するフェスティバル。私自身とても勉強になる貴重な機会です」と述べた。ハンブルクバレエ団のエドウィン・レヴァツォフとミハイロフスキー・バレエ団のレオニード・サラファーノフは、世界フェスに参加する喜びを語り、通訳は英語に。イサック・エルナンデス(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)とダニエル・カマルゴ(オランダ国立バレエ団)は初参加の期待を述べた。

再び前方の女性陣にマイクが移動。シルヴィア・アッツォーニ(ハンブルク・バレエ団)は、来日公演で踊った事のない作品を上演し、日本の観客に新しいものを届けると語る。アッツォーニの隣りは、2007年に引退したのち5年前に復帰した、元アメリカン・バレエ・シアターのプリンシパル、アレッサンドラ・フェリ。今回の出演者の目玉の一人だ。これまで幾度も来日した日本に再び戻って来た喜びとともに、「ササキサンは私と私のキャリアに大きな影響を与えた人」と述べた。フェリもまた、日本で踊った事のない3作品を上演する。マリア・コチェトコワは「世界中の素晴らしいダンサーと共演できて嬉しいです。日本が大好きで、これから数週間を楽しみたい」と、はにかみとともに緊張気味に挨拶した。アリーナ・コジョカル(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)は「日本で踊るのは毎回楽しみですが、世界フェスはいつも特別」と語る。コジョカルは7月28日の全幕プロに、サラファーノフと共に主演した。元シュツットガルト・バレエ団のマリア・アイシュヴァルトはこの場にいることを嬉しく思うと語り、イングリッシュ・ナショナル・バレエの芸術監督のタマラ・ロホは「日本の観客は本当に温かい」と述べた。続いてサラ・ラム(英国ロイヤル・バレエ団)は、コンクール参加のために初来日した時の思い出を語った。その時の結果はコジョカルが金でラムが銀。「一番最初に覚えた日本語は、私の出場番号のニヒャクサンジュウニバン(232番)でした」と話し、笑いを誘った。続いて初参加のメリッサ・ハミルトン(英国ロイヤル・バレエ団)とエリサ・バデネス(シュツットガルト・バレエ団)が、世界フェスへの期待を語り、マイクは男性陣の控える後方へ。

フェデリコ・ボネッリ(英国ロイヤル・バレエ団)は東京文化会館に戻って来たことを嬉しく思うと挨拶した。続いて渋いグレーの浴衣姿のダニール・シムキン(アメリカン・バレエ・シアター)。流暢な日本語の自己紹介に続き、光栄な気持ちと謙虚な気持ちで舞台に臨みたいと語った。また周囲のダンサーを見渡し「美しい人間たち(beautiful human beings)と共に過ごすのは個人的にとても嬉しい」と独特の語り口で挨拶した。前回は出演が予定されていながら怪我で降板したデヴィッド・ホールバーグ(アメリカン・バレエ・シアター)は、満を持しての世界フェス初出場。5年ぶりの来日を「ある意味帰省(Homecoming)のような気分」と言う。今回パートナーを組むノヴィコワは、いちファンとしてYouTubeで踊りを見ていたそうで、記者会見の前日に初対面を果たしたと言って会場を驚かせた。フリーデマン・フォーゲル(シュツットガルト・バレエ団)はフェスティバルを心から楽しみにしていると話した。元英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルのヨハン・コボーは現在フリー。「フリーだから売り出し中」と言って会場を笑わせた。コボーの正面に座る、プライベートでもパートナーのコジョカルが挨拶の間中、振り返ってコボーを見つめていたのが心に残る。ロベルト・ボッレ(ミラノ・スカラ座バレエ団/アメリカン・バレエ・シアター)が名前と所属を言うと、傍から「君は売り出し中?」との茶々が入り、「No」と答えるボッレとともに再び会場は笑いに包まれる。「素晴らしいダンサーとともに舞台に立てる幸せに感謝しています」と語った。アレクサンドル・リアブコ(ハンブルク・バレエ団)は、世界フェスに初めて参加したのは15年前だったと振り返る。ラストはマルセロ・ゴメス。AプロとBプロではフェリと踊ることを踏まえて「世界フェスに初参加した時も彼女と踊ったので、今回再び組むことができて嬉しい」と喜びを語り、ササキ・ガラではサラ・ラムと新たにパートナーを組むことも楽しみにしていると述べた。

第15回の今回は、コーセーU29シート(29歳以下の観客を対象とした割引チケット)が提供されたり、全幕プロの『ドン・キホーテ』の一部をライブビューイングで中継したりと、新しい試みも話題となっている。バレエの伝統から最先端までを一晩のステージで堪能できる世界フェスは、「バレエ界の移り変わりが定点観測できる」「竹の節目のような」(高橋氏)公演だ。猛暑の8月がさらに熱く湧く15日間になりそうだ。

(取材&文 隅田有)

世界バレエフェスティバル(東京文化会館大ホール)
Aプロ 2018年8月1〜5日
Bプロ 2018年8月8〜12日
Sasaki Gala 2018年8月15日


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