February 02, 2018

ハンブルク・バレエ団2018年日本公演記者会見

ハンブルク・バレエ団2018年日本公演に先立ち、記者会見が開かれた。同日日本に到着したばかりの、芸術監督ジョン・ノイマイヤー氏、ダンサーのアレクサンドル・リアブコ氏とアレクサンドル・トルーシュ氏、そして同団広報部長のフォン・ヨルン・リクホフ氏が出席し、作品への思いを語った。


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今回の日本ツアーは、東京で『椿姫』と『ニジンスキー』全幕、およびガラ『ジョン・ノイマイヤーの世界』が上演される。そして京都でも『ジョン・ノイマイヤーの世界』が予定されている。日本初公開の作品はなく、特に全幕二作はノイマイヤーの代表作としてよく知られている。そんな長年愛され続けている作品でも、たびたび「再発見」があるという。

ノイマイヤー(以下敬称略)「ダンサーには、毎回の公演が一度きりのパフォーマンスなのだという気持ちで臨むよう教えています。今回の日本公演は、アレクサンドル(サシャ)・トルーシュの(『椿姫』の)アルマン役のデビューとなりますが、パートナーのアリーナ・コジョカルとのリハーサルで、これまで気づいていなかった、新たな瞬間や関係性の発見がありました。全ての公演は、演じるダンサーによって異なる色彩を帯びるので、できる限り多くの公演を観ることは重要ですよ。」

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『ニジンスキー』は2005年の同団来日公演以来、披露されるのは13年ぶり。

ノイマイヤー「ニジンスキーという人物は、20世紀の最も重要な表現者の一人だと思っています。でもこれはニジンスキーのドキュメンタリーではありません。新しい知識が学べるような作品ではないでしょう。このバレエは、傑出したダンサーであり、振付家であり、そしてスピリチュアルな人物の、人生の断片の集合体です。本作を長年踊ってきたリアブコと、(若手の)トルーシュが今回はタイトルロールを踊ります。観客の皆さんは、二人のサシャが演じるニジンスキーの解釈の違いに驚くと思いますよ!」

『ノイマイヤー・ガラ』は前回来日時に大きな話題となった。

ノイマイヤー「一つのテーマをもとに作られた、ちょっと変わったガラ公演です。イタリアのスポレートにある大聖堂の前で上演するために作られました。その少し前にインタビューで、私にとってバレエとは何かを問われ、私の一部で中心的なものだと答えたばかりでした。作品と作品の間に、私自身にとってこれらが何を表現しているのかという説明が入ります。私の”無意識”を掘り下げるようなものでもありますが、この作品もドキュメンタリーではありません。だから、私の”秘密の人生を暴く”ようなものではありませんよ(笑)。プリンシパルを含む、バレエ団の全てのダンサーが、それぞれの作品のパートを踊ります。」

続いてダンサー2名が作品について語った。

リアブコ「日本でのツアーは毎回特別なものです。私の最初のハンブルク・バレエ団の日本ツアーでも『椿姫』を上演し、その時私はまだアンダースタディでしたが、コール・ド・バレエの全てのパートを学びました。『ニジンスキー』は初演キャストの一人です。主役だけでなく、アルルカン、薔薇、ペトルーシュカや、金の奴隷の役も学びました。残念ながら金の奴隷はまだ踊ったことがありませんが(笑)。最初のリハーサルの時のことをよく覚えています。ジョンは私に色々と違うことを試させてくれて、そこから生まれるものを探して行きました。世界中で何度も公演を重ねてきましたが、ここ数年上演していなかったので、初演時に立ち戻りつつ新たな発見と共に演じられると思います。」

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トルーシュ「多分12歳か13歳の頃だと思うのですが『椿姫』を初めて観た時から、この役を踊ることを夢見てきました。幸運なことに、これまで多くの素晴らしいダンサーによる、高いクオリティのパフォーマンスを見ることができ、もしも自分だったらどのように演じるだろうかと、ずっと思いを巡らせてきました。ダンサーにとって、このバレエは、振付と音楽と感情が結びついた、とても美しい作品です。ダンサーの視点で述べると、ある作品は踊るよりも見る方が面白く、別の作品は見るよりも踊る方が楽しいものがありますが、『椿姫』はその両方です。素晴らしいパートナーや、サポートしてくれる友人たちと、ステージに立てることは大きな喜びです。」

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『ニジンスキー』は2000年に初演され、日本では2005年の来日公演で上演された。13年間の間にどのような変化や成長があったのだろうか。

ノイマイヤー「このような進化は、説明するのが難しいのです。たとえば、あるバレエはとても面白いが長すぎると感じることがあるでしょう。例を挙げると『椿姫』の初演は現在よりも15分は長かった。しかし『ニジンスキー』がとげた変化は、もっと複雑なものです。全ての舞台は公演ごとに新しく一度きりのものです。しかしそうあるには、リハーサルでも本番でも、自分自身に正直でなければなりません。リハーサル中にしっくりこなかったり、違和感を感じたりした時は、細かい点を変更することがあります。振付家は過去よりも今の方が経験を積んでいるので、より良くする方法を知っているはずです。」

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「過去の作品は、創った時点で自分が何を表現したかったのかを良く覚えています。それを踏まえて、ここを変えたらさらに良くなると気づくことがあります。また、リハーサル中に、ダンサー同士の間にキラリと光る感情の迸りが見られ、役柄が収まるべきところに収まり、より深く、場合によっては異なる結論が導かれることもあります。しかし、このような変化のリストを作っても、バレエ史研究家以外の興味をひくことはないでしょう。」

「『ニジンスキー』は初演から長いことハンブルク・バレエのダンサーしか踊っていなかったのですが、私の古くからの友人のカレン・ケインの招きで、彼女が芸術監督を務めるカナダ国立バレエ団でも上演しました。私のカンパニーのダンサーは、どのように作品が成り立っているかを含め、私の作品の伝統を知っています。けれど新しいカンパニーではそうはいかないので、一から説明する必要があります。その過程で、何をしなければいけないのか、何が足りないのか、別のやり方があるのではないかなどに、気づくことがあります。それを自分のカンパニーに持ち帰りました。元々その役を演じていたダンサーにとって、長く踊っていた方法を変えるように言われるのは、迷惑でもあり裏切りと感じるかもしれないのですが、そこで私は「あなたのやり方は好きだが、作品をより良いものにするために、個人のエゴを捨ててちょっと別の方法も試してみよう」と提案します。」

「また別の例では、以前オーストラリアで上演した際のことですが、オリジナルキャストの一人であった女性ダンサーが、終演後に私のところにやってきて「とても熱のこもった舞台だったけれど、足りないステップがあった」と言いました。その時に私は、公演を重ねていく過程で、意図せず無くしてしまったステップがあることに気づいたのです。私たちはリハーサルの際も映像で記録しているので、初演時の映像を見直して、何を忘れていたのかを確認しました。ダンサーは人間なので、日常生活で何かを忘れることがあるのと同じように、振付も些細な点を忘れてしまうことがあり、さらにそれが習慣になってしまうことがあります。だから作品の進化について語るのは大変難しいですね。」

『ニジンスキー』はダンサーにとって、とても要求度の高い大役だ。

リアブコ「私にとって『ニジンスキー』は最も難しい作品です。最初に演じた頃、私はとても若かったので、リハーサルの時は毎回、自分にはできないのではないかと、とても不安でした。技術だけでなく、感情的にも苦しく、壁にぶち当たって、どうしたらよいのか分からず、泣き出したくなることもありました。けれどそれを克服することで強くなります。この作品は何度も踊りましたが、毎回ひどく消耗しヘトヘトになります。けれど克服することで、何か新しい次元に到達するのです。『ニジンスキー』を踊るには、入念な準備が必要で、公演の3日前から喋らなくなり、目を見開いて歩き回ったりするので、妻からは「ニジンスキーを踊るからでしょう」と言われたりします。若い頃はもっと準備に時間がかかりました。今も決して簡単になった訳ではありませんが、以前とは何かが変わりました。とはいえ今でも、開演前はパフォーマンスがどうなるか分かりません。今回の舞台でも、再び「引き返せない点」に立つことを楽しみにしています(笑)。

トルーシュ「彼(リアブコ)に賛成です。この作品は沢山の要素があります。ニジンスキーは愉快でチャーミングで愛情豊かでアグレッシブで躁の気もある人物です。ダンサーとしてこのような感情を体験できるのは、素晴らしい経験です。多くのジョンの作品同様に、本作も主役は舞台に出ずっぱりで、しかも激しい感情を込めて踊るので、本当にクタクタになります。振付が狂気に導き、これまでにない心境に到達する、特別な経験でもあります。開演前はこれから3時間狂っていくことを思うと散々な気分になったりしますが、得るものは大きいです。」


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近年、スターが集うガラ公演の定番ともなった『椿姫』は2キャスト。ハンブルク・バレエ団のゲスト・ダンサーとしても活躍する、アリーナ・コジョカルが初日と3日目に登場する。また『ニジンスキー』は前回上演時の衝撃がいまだに語り継がれている。リアブコはこれまで度々日本のファンに「今度はいつ見られるの?」と聞かれてきたそうだ。1986年に初来日して以来、今回で8度目。前回の来日から二年ぶりのツアーだ。2月14日ではロームシアター京都でロイド・リギンズ氏によるワークショップも開催される。


ハンブルク・バレエ団2018年日本公演

『椿姫』2月2日、3日、4日 東京文化会館
《ジョン・ノイマイヤーの世界》 2月7日 東京文化会館、2月17日 ロームシアター京都
『ニジンスキー』 2月10日、11日、12日 東京文化会館

公演詳細
http://www.nbs.or.jp/stages/2018/hamburg/index.html
http://rohmtheatrekyoto.jp/program/6776/

お問い合わせ

NBSチケットセンター TEL 03-3791-8888
ロームシアター京都チケットカウンター TEL.075-746-3201


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