November 24, 2017

モーリス・ベジャール・バレエ団&東京バレエ団特別合同ガラ『ベジャール・セレブレーション』

モーリス・ベジャールの没後10年を記念し、命日である11月22日と翌23日に特別公演が開催された。第一部はモーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)のメンバーによるジル・ロマン振付の『テム・エ・ヴァリアシオン』、第二部はベジャールの作品から抜粋し再構成した『ベジャール・セレブレーション』。第二部には東京バレエ団のダンサーも参加し合同での上演となった。

『テム・エ・ヴァリアシオン』は約一時間の作品で、オリジナルの表記は『t 'M et variations』。モーリスのM、フランス語で愛を意味するaimer、バランシンの『テーマとヴァリエーション』など、複数の意味がタイトルに込められている。振付は、長年BBLでダンサーとして活躍し、現在はベジャールのあとを継いで芸術監督としてバレエ団を率いるジル・ロマン。総勢25名以上のダンサーが、2、3人の少人数から6人以上のグループまで、様々な組み合わせでダンスを踊り繋いで行った。舞台後方にパーカッションや機材が置かれ、2名のミュージシャンが本作の為に作られたサウンドを演奏する。音楽がムーヴメントを縛る事なく、しかし、要所要所では音と動きがピタリと合う。ライブならではの臨場感があり、ダンサーとミュージシャンの間に、スリリングなインタラクションが生まれていた。振付は、男女が左右に組み、片方が膝を曲げた脚を高く上げるなど、ベジャールのボキャブラリーを彷彿とさせるポーズがパ・ド・ドゥに見られるものの、アンサンブルにはロマンのカラーが感じられる。Aプロの『魔笛』と比較して、ダンサーそれぞれの個性がよりはっきりと表れ、カンパニーのメンバーの幅広い魅力が伝わった。作品中盤、6人の男性ダンサーによる、コミカルな一章が心に残る。手をつないでうつぶせに寝る姿は、スカイダイビングのようであり、手を双眼鏡のように目に当てて腰を屈める姿は、海底を探検しているようだった。ラストは出演者全員が舞台に揃い、文字を書いたり手話のような仕草をして幕になる。本作はベジャールに宛てた手紙のような作品ということだが、真摯に何かを伝えようとする仕草は、創作の背景を知らない観客の心も動かしただろう。ベジャールへのメッセージであると同時に、ベジャールと切り離しても成立する素晴らしい作品だった。

『ベジャール・セレブレーション』は、舞台中央で一人のダンサーがバーレッスンをするプロローグ付き。『1789・・・そして私たち』の第一交響曲で始まり、第九交響曲で終わる。その間に『バクチIII』『アレポ』など、ベジャールの代表作を含む11作品が披露された。BBLのダンサーは『わが夢の都ウィーン』と『ハムレット』を踊ったエリザベット・ロスとジュリアン・ファヴロー、チャドの民族音楽を使った『ヘリオガバル』のアランナ・アーキバルドとジェイム・オエッソ、ユダヤ教の伝統音楽を使った『ディブク』のジャスミン・カマロタとヴィト・パンシーニなどなど、ベテランから若手まで作品のエッセンスをしっかりと伝えた。東京バレエ団のダンサーは『バロッコ・ベルカント』のパ・ド・シスを踊った沖香菜子、三雲友里加、政本絵美、秋元康臣、宮川新大、岸本秀雄が、ムーヴメントの面白みをつかみエネルギーに溢れる踊りを見せた。ほかに『我々のファウスト』の上野水香と柄本弾、『アレポ』の奈良春夏、伝田陽美、木村和夫、ブラウリオ・アルバレスなどが主要なパートを踊った。渡辺理恵、吉川留衣、永田雄大、和田康佑は、BBLのメンバーと共に、『1789・・・そして私たち』第九交響曲に出演。ラストはロマンがステージに駆け出してくる。ロマンを中心に手をつなぎ合ったダンサーたちが、渦を描くように舞台をぐるりと一周し、プロローグのバーが再度運び込まれて、舞台中央に置かれる。"セレブレーション"というタイトルに相応しい感動的なエンディングに、会場からは涙で鼻をすする音が聞かれた。

終演時間は22時近くとなり長丁場ではあったが、緊張感が途切れることのない、充実した記念公演だった。

(隅田有 11月22日 19:00 東京文化会館大ホール)


outofnice at 11:54舞台評 
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