October 31, 2017

【ダンス・タイムズがお勧めする 2017年11月公演】

ダンス・タイムズ編集部が選んだ来月のお勧め公演をご紹介します。あくまでもメンバー個人の予想に基づいていますので、公演の内容を保証するものではありません。ぜひ、観客の皆さまが劇場へ行ってご確認ください。また、1020日時点の情報を基にしていますので、日程、出演者、演目等が変更される場合もあります。完売の場合もありますので、事前にご確認ください。

 

【ダンス・タイムズがお勧めする 2017年11月公演】


◆日本バレエ協会《バレエ・クレアシオン》

2017年11月11日(メルパルク)

◇今回は、田中祐子の『くびちりどぅし』、近藤良平の『ねこ背』、中村恩恵の『7つの短編』という3本の新作を上演する。田中は沖縄の題材をトー・シューズのダンサーを使ってどう処理するのか、近藤がバレエ・ダンサーに運動靴を履かせてどんな舞台を作るのか興味津津。中村の舞台では、ジョン・ケージの音楽を中村、首藤康之、山本隆之と日本バレエ協会のダンサーたちが踊る。新たな名作誕生への期待が高まる。(山野博大)


◆黒沢美香追悼企画《美香さんありがとう》

2017年11月12、25日『一人に一曲』18日『lonely woman』(大倉山記念館ホール)

◇2016年12月に旅立った黒沢美香の追悼企画。彼女と共に歩んできた黒沢美香&ダンサーズ有志によるダンス公演と上映会が、月をまたいで12月まで行われる。一人ずつランダムに選ばれた曲を即興で踊り切る『一人に一曲』、1991年に日本代表となりフランスでバニョレ国際振付コンクール本選に参加するも、その即興性ゆえに上演を拒まれたという『Lonely Woman』は、いずれも黒沢の伝説のシリーズ「偶然の果実」から生まれたもの。年末には、24名の歴代のダンサーズが黒沢の小品を次々と踊る[黒沢美香 振付作品集「ダンス☆ショー」より]が上演される。上演会は、渋谷のアップリンクにて、作品やドキュメンタリーを集めた5つのプログラム編成となっている。その他、トークあり、ギャラリー展示あり、黒沢の清廉且つギラギラしたダンスワールドにどっぷり浸かれるという企画である。寂しいが、このイベントが黒沢美香&ダンサーズとって最後の活動となるという。今年の締めくくりには、黒沢を偲びつつ、カンパニーメンバーの前途をともに祝したい。(吉田 香)


◆STスポット《30th アニバーサーリー ダンスセレクション》

vol.2 ダンスショーケース(Aokid、岩淵貞太、岡田智代、モモンガ・コンプレックス)2017年11月9 – 12日(STスポット)

Vol.3 山田うん×楠田健造『生えてくる』2017年11月17-19日(STスポット)

◇ST Spotは横浜駅近くのビルの地下にある、さほど大きくはないスペース。でも、ここは新しいコンテンポラリーダンスが生まれる場であり、同時にそれを創る振付家、ダンサー、スタッフが育つ場である。30周年を迎えて、これまでST Spotに関わってきたダンサーたちが集う企画が行われている。既にvol.1は10月に終わり、伊藤キムと山下残が踊った。11月はvol.2 ダンスショーケースでAokid、岩淵貞太、岡田智代、モモンガ・コンプレックスの4組の作品が、vol.3 で山田うん×楠田健造の『生えてくる』が上演される。特に後者は、初めての振付作品をここで発表した山田と、その公演に出演し現在はオランダを拠点に活動している楠田が、21年ぶりに出会ってデュオを踊るという。多様なダンスとダンサーと、それらが織りなす場の歴史を味わい、30周年を祝いたい。(稲田奈緒美)


◆SPAC『変身』

2017年11月18日〜12月10日(静岡芸術劇場)

◇不条理文学の傑作を小野寺修二が演出した本作の初演(2014年)は、小野寺の鮮やかな作品解釈と緻密な演出、俳優達の明晰な身体表現、音楽の阿部海太郎や美術の深沢襟らのセンス溢れるスタッフワークが高度に嚙み合い、『変身』の一つの完成形とも言える素晴らしい舞台となった。この傑作が3年ぶりに再演される。今回は、初演に出演したカンパニー・デラシネラの大庭裕介が抜けてオールSPACキャストとなるが、スズキ・メソッドを習得しているSPACの俳優陣はみな驚くほど体のコントロールに優れ、小野寺の複雑な振付をモノにしている。ダンスファンにこそ見てほしい、珠玉の演劇公演である。(折田 彩)


◆モーリス・ベジャールバレエ団Aプロ『魔笛』、Bプロ『ボレロ』『ピアフ』『アニマ・ブルース』『兄弟』、東京バレエ団合同ガラ《ベジャール・セレブレーション》
Aプロ 2017年11月17〜19日(東京文化会館)
Bプロ 2017年11月25、26日(東京文化会館)
特別合同ガラ 2017年11月22、23日(東京文化会館)

◇ベジャール没後10年の記念シリーズ。モーリス・ベジャールバレエ団の来日公演としてAとBの二つのプログラムを上演し、その合間に東京バレエ団との合同公演《ベジャール・セレブレーション》を披露する。この合同公演はベジャールの命日である11月22日とその翌日の23日に開催され、ベジャールを偲ぶ舞台映像を公開するなど特別企画が実施される。会場には遺品も展示されるそうだ。バレエ団の来日公演では『ボレロ』(Bプロ)を始めとする人気演目に加え、現芸術監督ジル・ロマンの振付作品も予定されており、カンパニーの今が感じられるプログラム。ベジャール亡き後も力強く前進するモーリス・ベジャールバレエ団を、しっかりと目に焼き付けたい。(隅田有)


◆KARAS《アップデイトダンス No.49》『顔』

2017年11月18日〜26日(カラス・アパラタス)

◇勅使川原が自前のスタジオで自作を上演するアップデイトダンスシリーズ。2013年のスタジオ開設当初からコンスタントに創作を重ね、4年で48本もの作品が生み出された。今年最後のスタジオ公演は、カンパニーの看板ダンサー、佐東利穂子のソロ公演。最近の佐東のソロは神がかった輝きを放っており、一作毎ごとに深化しているように見える。濃密な空間のなかでぜひ彼女を堪能してほしい。(折田)


◆イワキ・バレエ・カンパニー《バレエ・ガラ2017》

2017年11月23日(新宿文化会館)

◇今回で3度目となるガラ公演は、菅野英男、芳賀 望米沢 唯を始めとする豪華ゲスト陣を迎え、昨年初演された高橋竜太振付『D/CARMEN』、青木尚哉が演出・振付を手がける『互ヒニ素』など、とても多彩で興味深いラインアップだ。また、米沢と芳賀の『ダイアナとアクティオン』も、磐石のテクニックを誇る米沢と、安定した踊りを見せる芳賀との化学反応に期待が高まる。(宮本珠希)


◆NBAバレエ団『くるみ割り人形』

2017年11月23日(所沢市民文化センターミューズ マーキーホール)

◇12月の東京公演より一足早く、所沢で上演される。久保紘一版は、クリスマスツリーが伸びる場面にプロジェクションマッピングを使ったり、戦いに敗れたネズミの残党が毒入りケーキのテロを仕掛けたりと、観客を楽しませる仕掛けが盛りだくさん。一幕には疾走感、二幕にはアクロバティックな華やかさがある。NBAらしさが感じられる、エンターテイメント性の高い演目だ。(隅田)


◆《舞の会―京阪の座敷舞−》

2017年11月23日(国立劇場)

毎年恒例の舞の会。凝縮された日本の美学を楽しめること必至の公演。座敷舞は、シンプルな扮装、装飾を削ぎ落とした中に、風景や人の心といった情緒を紡ぎ出す。いわば引き算の美学がそこにある。上方を代表する四流(井上・楳茂都・山村・吉村)を中心とした布陣で、1時、4時の二回公演、各々6演目が並ぶ。ますますの充実をみせる人間国宝・井上八千代の『蓬生』。吉村輝章、真ゆうによるのどかな『たぬき』。山村友五郎の端然とした『新道成寺』などなど、多種多様な舞の世界を堪能できるだろう。(阿部さとみ)


◆新国立劇場《舞踏の今・その1》山海塾『海の賑わい 陸の静寂 〜めぐり』

2017年11月25、26日(新国立劇場中ホール)

◇新国立劇場の舞台に舞踏の山海塾と大駱駝艦が登場する。その第一弾が山海塾だ。彼らが東京で公演を行うのは2015年以来、2年半ぶりのこと。『海の賑わい陸の静寂〜めぐり』は新国立劇場中劇場の奥の深い舞台に似合いそう。久しぶりに彼らの宇宙感覚漂う静謐な舞踏空間をじっくりと楽しみたい。(山野)





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