September 14, 2017

《Bright Step 2017》

世界各国で活躍する若手ダンサーによるプロジェクト"Bright Step"。代表の西島勇人(ロシア国立バレエ・モスクワ)、副代表の奥村 彩(オランダ国立バレエ団)らを中心に結成され、2015年の旗揚げ公演以来、毎年、同世代の踊り手が一同に会し、舞台やワークショップ等の活動を精力的に行っている。第3回となる本公演も、進境著しい出演者による華やかな一夜となった。



この日まず目を引いたのが、『海賊』第1幕より奴隷のグラン・パ・ド・ドゥとマーシャ・コラール振付のコンテンポラリー作品『said and done』を踊った菅井円加(ハンブルク・バレエ団)だ。『海賊』では、空中に静止するような跳躍や正確無比なポアント・ワークなど、その身体能力の高さと抜群の音楽性とが結びつき、ひとつひとつのパからも役柄の心情が語られるような濃密な踊りを見せた。『said and done』は、西島勇人とのデュエット。フロアでのユニゾンから次第に動きのボキャブラリーが拡張されてゆくにつれ、その研ぎ澄まされた肉体の可能性を鮮烈に印象づけていた。ハンブルクでもソリストに昇進し、今後、ますます目が離せない。

加藤三希央(ロイヤル・フランダース・バレエ団)が踊ったシディ・ラルビ・シェルカウィの『Mononoke』は、全身を舞台空間にたゆたわせるように周到に紡ぎ出されてゆく動きが、会場を神秘的な雰囲気に包んでいた。また、奥村 彩との『グラン・パ・クラシック』では一変して、キレのよい正確なテクニックとノーブルな身のこなしで、彼の多彩な身体性を示し、対する奥村も、安定したバランスや強い回転軸など、堅実かつ気品溢れる踊りが光っていた。

石崎双葉、高橋裕哉(ともにハンガリー国立バレエ団)による『ロミオとジュリエット』より寝室のパ・ド・ドゥも白眉。ジョバンニ・ディ・パルマの振付には複雑なリフトが盛り込まれ、身を裂かれるほどの悲痛な別れの中に、愛に生きる若者のエネルギーや疾走感が描かれている。ふたりの瑞々しく、それでいてドラマティックな表現は、日本初演の同作を観客の心に刻んだことであろう。

先頃のモスクワ国際バレエコンクール シニア デュエット部門でそれぞれ金賞・銅賞に輝いた大川航矢、寺田 翠(ともにタタールスタン国立カザン歌劇場バレエ団)は、同コンクール第2ラウンドで踊った『タリスマン』で凱旋。大川の驚くべき超絶技巧や寺田の軽やかで胸のすくような演技、そしてふたりの磐石なパートナーシップは圧巻で、ロシア・バレエの優美かつダイナミックなスタイルを存分に堪能できた。

淵上礼奈(英国バーミンガム・ロイヤルバレエ団)、寺田翠、大谷遥陽(スペイン国立ダンスカンパニー)による『海賊』第1幕のオダリスクも、それぞれが持ち味を発揮し好演。茶目っ気たっぷりに次々と大技を繰り出し会場を沸かせた大川、西島の『Buddy』、山本勝利(ドイツ・キール州立劇場)が「山の魔王の宮殿にて」の旋律を受け、スリリングな展開を見せた『Puppet』と、ダンサー自身の振付による作品も興味深い。他にも、関野海斗(フランス国立マルセイユバレエ ジュニアカンパニー)、北野友里夏(ポーランド国立劇場バレエ団)、福田昂平(ロシア国立ノヴォシビルスク劇場バレエ団)と、伸び盛りの踊り手たちが競演した。

 そして 、オープニングでは西島がひとりひとりを紹介し、終演後も、出演者一同でロビーに出向くなど、ダンサーと観客との"距離"を縮め、ひとりでも多くの人にバレエの魅力を伝えようとする思いが感じられたことも記したい。回を重ねるごとに充実ぶりも伺える。今後は、新たなアプローチの演目や構成などもぜひ見てみたい。同プロジェクトの更なる飛躍を期待する。(宮本珠希  2017/7/30  新宿文化センター・大ホール)

 



piyopiyotamaki at 18:35舞台評 
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