August 02, 2017

「蘇るモーリス・ベジャール」モーリス・ベジャール・バレエ団 2017年日本公演 記者会見

11月に予定されているモーリス・ベジャール・バレエ団の来日公演に先立ち、記者会見と映像上演会が催された。芸術監督のジル・ロマンと、バレエ団で長年活躍するダンサー那須野圭右がゲストとして登場。ベジャールと過ごした日々を振り返りつつ、来日公演で上演される演目の紹介や、現在のカンパニーの様子が語られた。さらに後半は、過去の来日公演を振り返り、懐かしい顔ぶれが次々と登場する記念映像が上演された。 

写真 2017-07-24 20 54 15_22007年11月にベジャールが亡くなり、今年で10年。かつてはベジャール作品のみを上演するカンパニーだったが、現在はロマンを始めとする他の振付家の新作も発表し、"二つの車輪"で活動している。「過去を振り返らず、先に進め」という、ベジャールが遺した言葉の通り、新たな挑戦を続けているようだ。

ロマンは1979年に19歳で20世紀バレエ団(現 ベジャール・バレエ・ローザンヌ)に入団。主要ダンサーとして、またベジャールの片腕として長年活躍してきた。そんなロマンは、ベジャール作品を稽古する時、今も彼がそばにいるように感じると言う。那須野は16歳でルードラ(バレエ学校)に留学。那須野にとってのベジャールは、肩を揉んだり、水を持って行ったり、車椅子を押したりと、一言で言えば"おじいちゃん"という印象なのだそうだ。ベジャールの晩年をカンパニーのメンバーとして過ごした那須野には、巨匠との家庭的な思い出が溢れているようだった。

来日公演のAプロは『魔笛』。モーツァルトの同名のオペラを、台本や音楽を変更せずに、そのままバレエ化した本作は、2004年以来13年振りの上演となる。ロマンは初演キャストの一人。"ベジャールはオペラを振り付けた唯一の人"というロマンの言葉からは、オペラを舞踊で表現し成功させることが、本来は無謀とも言えるほど難しいことが伝わる。

Bプロでは、1988年に日本で初演した『ピアフ』、ロマン曰く日本公演には外せない演目『ボレロ』、そしてロマン振付の2作品が上演される。『アニマ・ブルース』はカテリーナ・シャルキナがオードリー・ヘップバーンを彷彿とさせる女性を演じる。タイトルの通りカール・ユングのアニマ・アニムスのセオリーをテーマの一つとしている。『兄弟』は、那須野と大貫真幹のために、ロマンが振り付けた作品。吉田兄弟の三味線や、美空ひばりが歌うピアフの名曲が使われている。プライベートでも仲の良い那須野と大貫を兄弟に見立てた作品というが、本作の題材となったボルヘスの短編『じゃま者』(『ブロディーの報告書』より)は少々物騒な物語。"じゃま者"は、小説と同じ末路を辿るのだろうか。

さらに11月22、23日には、東京バレエ団との合同公演が開催される。第一部は昨年12月にローザンヌで初演された『t 'M et variations』。タイトルには、バランシンの『テーマとヴァリエーション』、モーリスのM、フランス語で愛を意味するaimeが隠されている。ロマンは不眠症ぎみのベジャールから沢山の手紙をもらったという。『ニーベルングの指輪』の製作中には10枚にも及ぶことがあったそうだ。本作は、ロマンがダンサーの身体を使って、日記のように今のカンパニーの様子をベジャールに綴る作品であり、かつてもらった手紙への"返信"でもあるようだ。第二部の『ベジャール・セレブレーション』は、ベジャールの作品をパノラマで俯瞰する祝祭的な作品。こちらも昨年ローザンヌで上演されているが、東京バレエ団とのリハーサルを通し、新たなバージョンになるようだ。

写真 2017-07-24 20 56 13 ベジャールが亡くなり10年。バレエ団の拠点がブリュッセルからローザンヌに移り30年。そしてバレエ団の初来日から50年。予定されている演目はどれもテーマや音楽に関連があり、作品同士がダイナミックに響き合うプログラムだ。様々な意味で節目となる公演だけに、今から期待が高まる。

(隅田有 2017年7月24日 日経ホール) 


モーリス・ベジャール・バレエ団 2017年日本公演
Aプロ 2017年11月17、18、19日
Bプロ 2017年11月25昼、25夜、26日
《ベジャール セレブレーション》2017年11月22、23日
東京文化会館大ホール
公演詳細 http://www.nbs.or.jp/stages/2017/bejart/schedule.html 


outofnice at 12:10レポート 
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