June 07, 2017

柳家花緑 X 東京シティ・バレエ団 X 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団『新・おさよ』

『ジゼル』をもとにした柳家花緑によるオリジナルの落語と、東京シティ・バレエ団がコラボレートした舞台が上演された。本作の初演は2015年。再演の今回はタイトルに"新"が加わり『新・おさよ』。東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の生演奏が付いた。

言葉を使わずに上演されるバレエ作品に言葉を与えることは、大きな冒険だ。観客の感性にゆだねられている解釈部分も、言葉で表す場合は一つの"答え"を選びとる必要がある。作り手もそこは熟知しているのだろう。ちょっとおつむの足りないおさよ(ジゼル)や、オネエ風の幽霊(ミルタ)など、バレエ版が持つ可能性の一つを大きく膨らませた設定が面白い。ロマンティック・バレエの名作が、江戸の人情噺として描かれ「ジゼル」を知っている人も知らない人も楽しめる、笑いと涙たっぷりの公演だった。

構成はバレエと同じ全二幕。ステージ中央に高座が作られ、その他のセットは、ベンチと花壇とお墓のみ。ダンサーの出演はジゼル、アルブレヒト、村人数名と、ウィリたち。ヒラリオン、バチルド、ベルタなどの他の主要なキャラクターは、落語の中にしか登場しない。前奏曲の後に幕が開くと、マイクを持った花緑が登場し、本作上演に至までの背景を語る。一旦袖に入ると、入れ替わりにアルブレヒト(黄凱)が登場し、ジゼル(志賀育恵)を誘い出す。前半のバレエシーンは花占いの場面からヒラリオンが登場する直前まで。再び舞台に現れた噺家が、ジゼルの一幕分のストーリーを語る。要所要所でバレエの同場面の曲が演奏され、ヒラリオンが証拠の刀をジゼルに見せるくだりでは、刀に見立てた扇子を突き出す仕草と、オーケストラの演奏のタイミングがピタリと合った。続くバレエは、中盤を全てとばして狂乱のシーンから再開。二幕は前奏曲の後、すぐにミルタ(岡博美)のソロに続き、ジゼルが蘇るまでを上演。アルブレヒトの音楽で花緑が登場し、そこから落語に切り替わる。『おさよ』の二幕は、四十九日の墓参りという設定だ。後半のストーリーを落語で語り終わった後、バレエ版のラストシーンが上演されて幕となる。

落語版の大きな特色は、ヒラリオン改め"半ちゃん"が、殺されずに助かる点だ。言葉を与えられた半ちゃんは、いかにも人の良さそうな男で、死ぬ必要がない。彼が"幽霊"たちから逃げ延びる設定は、バレエ版を知っている観客にとっては、嬉しい驚きだったのではないだろうか。

一幕のジゼルのヴァリエーションや、二幕のアダジオなど、踊りとしての見どころは潔く全てカットし、落語に主役を譲っていた。踊る方は大変だったろうが、メインディッシュが明確な、バランスの良い公演だった。落語の終盤、徳を積んだおさよが成仏する場面では、客席から感動で鼻をすする音が聞かれた。

(隅田有 2017/05/28 ティアラこうとう 大ホール)


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