April 09, 2017

東京バレエ団『ウィンター・ガラ』

当初予定のプログラム順が変更になり『中国の不思議な役人』から始まった。タイトルロールは木村和夫。登場の際の、手首から先を振るわせる異様な姿が強烈だ。不気味な男だが五分丈のシャツから伸びる腕はエレガントで、肌が見えている部分には女性的な柔らかさもある。脚の長いスラリとしたスタイルでありながら、しっかりと腰が入り、動きには隙がない。全身のコントロールが見事だ。これまで見た木村の舞台の中でも、特に心に残るパフォーマンスだった。今回が本役の踊り納めというのはいかにも残念である。木村以外の出演者も素晴らしかった。特に冒頭の群舞は、集団の迫力に加えて一人一人の自己主張もあり、エネルギーに溢れていた。幕開きの群舞が観客の心を掴み、それ以降の良い流れを作るのは、昨年10月の『ザ・カブキ』とも共通する。


続いて『イン・ザ・ナイト』。東京バレエ団がロビンスの作品を上演するのは今回が初である。3組のパ・ド・ドゥには異なる愛の様子が描かれ、沖香菜子と秋元康臣、川島麻実子とブラウリオ・アルバレス、上野水香と柄本弾が、それぞれのパートを踊った。作品全体を束ねたところに形作られる印象は少々弱かったが、技術と叙情的な表現のバランスが良く、3組ともパートに合った踊りを見せた。第三部の『ボレロ』は、"メロディ"にオレリー・デュポンがゲスト出演。途切れることのない滑らかな動きや、両手を使って"リズム"を鼓舞する場面でのアクセントの取り方など、振付が良く分かる"ボレロの教本"のような踊りだった。隙がなく直感に甘えないクールさがオレリーらしい。これまで見て来た歴代のメロディが誰かによって、観客自身も本作に求めるものが異なってくるのだろう。

(隅田有 2017/02/23 19:00 オーチャードホール)


outofnice at 23:22舞台評 
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