March 11, 2017

素我螺部『SELL OUR BODY ExP』

出演はNoism出身の3名のダンサー、藤井b泉、宮原由紀夫、篠原未起子と、ギタリストの原大介。そして"隠し味"こと阪大特任助教でカニ博士の西山雄大。1時間弱の作品で、全4公演のうち、土曜日の昼は乳幼児も入場できる回だった。冒頭、全身タイツ姿のダンサー3人が登場。ギターがジャーンと鳴った瞬間、一斉に子供たちが泣き出す。そのタイミングの良さに大人たちが吹き出した。会場はギャラリーとしても使われる長方形のスペースで、片方の長辺に窓、もう片方に椅子を並べた設定。ダンサー同士がお互いの体の重みを使って滑ったりリフトをしたりと、踊りには狭いスペースならではの工夫がある。二台のベビーカーをヤドカリのように背負って踊ったり、にらめっこのような表情で静止したりと、ノリが良くてクスリと笑う演出が多い。猿蟹合戦を模した映像や、コメツキガニの集団行動についてのレクチャー、テルミンから想を得た装置の実演が途中に加わる。子供たちが空間に慣れて多少の音にも驚かなくなってゆく連続的な変化が、作品全体を統合する縦糸のように機能し、かれらのストレートな反応は作中の表現にリアリティをもたらした。晴天の週末の午後、会場のすぐ外では近所の大学の運動部の学生たちがランニングをしている。日常を感じさせる偶然の要素も演出の一部となり、多幸感溢れる公演だった。
(2017/03/11 隅田有 トーキョーワンダーサイト本郷 14:00)


outofnice at 16:44短評 
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