March 05, 2017

新国立劇場バレエ団『ヴァレンタイン・バレエ』

昨年は年明けにガラ『ニューイヤー・バレエ』があったが、今年はひと月遅れてこのタイトル。第一部『テーマとヴァリエーション』のプリンシパルは小野絢子と奥村康祐が務めた。小野は足元から上半身への動きの繋がりが素晴らしい。ポーズに入ってからも、腕は音が続く限り遠くに伸びてゆくようで、バランシンらしい優美さが感じられた。コール・ド・バレエは、一人一人の技術は高いが、4人並ぶとだれかが前に飛び出すなど、時折ラインの乱れが気になった。幾何学的な美しさが際立つ後半は、控えめながらも高揚感が立ち上がった。




第二部はパ・ド・ドゥが3本。『黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ』は木村優里と渡邊峻郁が出演した。木村はスラリとした手足のスタイリッシュなオディール。軽やかなステップに若々しさが溢れ、小悪魔的な魅力も感じられた。渡辺はジャンプの後のアラベスクや、連続のトゥール・アン・レールを一回ごとに確実に着地する。パを丁寧に終わらせることが、王子のノーブルさに繋がった。6月に上演される『ジゼル』のアルブレヒトに期待がかかる。ブルーを基調に、シャンパンゴールドのライトが落ちる照明が洒落ていた。『ソワレ・ド・バレエ』(振付:深川秀夫)は池田理沙子と井澤 駿が出演。池田は12月の『シンデレラ』と同様、愛嬌があり親しみを感じさせるキャラクターだ。背中を向けて二番のルルヴェに入る箇所など、音の前乗りと後乗りのメリハリが大胆な所にも個性が感じられた。三幕ラストは『タランテラ』。自由自在に跳んで回る米沢唯はいつもながら見事だが、福田圭吾も期待を遥かに上回る素晴らしい踊りを見せた。何と言ってもノリが良い。心臓破りのスピーディな振付だが、身体の力を巧みに抜いて、パに人間味を滲ませる。男性が身体を低く保ち、回転する女性を盛り上げるシーンや、男女が回転を競う場面では、テクニックだけでなく、その背景にある二人の関係性も浮かび上がった。

第三部は『トロイ・ゲーム』(振付:ロバート・ノース)。タイトルにトロイとあるが、音楽はサンバと少々頭が混乱する作品。古代ギリシャ風の衣装を着た男性8名が、くんずほぐれつのドタバタを見せる。コミカルな振付に客席からは笑い声が聞かれた。本編よりも、一人一人が技を見せるカーテンコールの方が、8人それぞれの個性が表れていた。
 
(隅田有 2017/02/18 14:00 新国立劇場オペラパレス) 


outofnice at 14:11舞台評 
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