July 29, 2015

《マニュエル・ルグリとウィーン国立バレエ団ダンサー 沖縄限定プレミアム公演》

マニュエル・ルグリがプロデュースを手がけた同公演は、自身が芸術監督を務めるウィーン国立バレエ団のトップ勢と若手をバランスよく配すことにより、多彩な演目が並んだ。
『ドニゼッティのパ・ド・ドゥ』を踊ったナターシャ・マイヤーは、華のある可憐な容姿と美しい足先がひときわ目を引き、柔軟な肢体が描く伸びやかなポーズは鮮烈な印象を残した。エネルギーに満ち溢れた快活な踊りに、今後はコントロール力や細やかなニュアンスが加われば、更に踊り手としての魅力が増すであろう。相手役のドゥミトル・タランはやや動きが重い部分もあったものの、堅実なサポートでマイヤーを支えた。
ケテヴァン・パパヴァとキリル・クルラーエフによる『アンナ・カレーニナ』では、ふたりの感情の応酬が化学反応を生み、役柄の心理をひとつひとつの動きに表出することで、濃密なドラマを立ち上げていた。
橋本清香とデニス・チェリェヴィチコが踊った『海賊』は、橋本のクリーンで安定感のあるシークエンスが見事。チェリェヴィチコも回転技に冴えを見せ、組んで踊る場面では、橋本の好リードが光った。
また、チェリェヴィチコによるソロ『レ・ブルジョワ』も、大きく柔らかな動きや芝居心のある仕草が色気に結びついていた。
ミハイル・ソスノヴィッチ、木本全優、エノ・ペシが『ル・スフル・ドゥ・レスプリ—魂のため息』で見せたしなやかなムーヴメントや、心が洗われるような清らかな表現も実に味わい深い。
『モーツアルト・ア・ドゥ』では、橋本清香&木本全優、ニーナ・トリーノ&ダヴィデ・ダト、ケテヴァン・パパヴァ&ミハイル・ソスノヴィッチの3組がそれぞれ叙情的なデュエットを披露。男女の移ろいゆく心の機微を丹念に紡ぎ出していた。
オルガ・エシナとエノ・ペシを中心に据えた『アレグロ・ブリランテ』には、終盤にかけて次第に熱量が高まっていくような一体感があり、エシナの気風のよい踊りも爽快。
ラストはパパヴァとルグリの『こうもり』で締めくくられた。ルグリの洗練された身のこなし、音楽性豊なステップ、スマートでウィットに富んだ表現はまさに至芸。踊る喜びを漲らせた輝く姿に会場はスタンディングオベーション。惜しみない拍手が送られていた。(宮本珠希 2015/7/4 19:00 那覇市民会館大ホール)


piyopiyotamaki at 01:32短評 
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