December 14, 2020

昨年新制作された斎藤友佳理版は、『くるみ割り人形』の作品本来の面白さを引き出し、高く評価された。今年はちょうど一年ぶりの再演。3公演トリプルキャストの2日目は、マーシャと王子に秋山瑛と宮川新大が、ドロッセルマイヤーに柄本弾が出演した。続きを読む

outofnice at 21:43舞台評

December 06, 2020


《CITY BALLET SALON》は、次の時代に作品を残すことを目指して、2011年2月に第1回を行った。第9回となる今回は、振付者として数々の実績を残す大ベテラン石井清子が2002年5月の《ラフィネ・バレエコンサート》で初演し、以後も何度か上演されてきた『ノスタルジー』、第1回の時に公演監督を務め、その後も第3回に『白いまじわり』、第4回に『白い命』、第7回に『終息への扉』、第8回に『セレナーデ』を発表してきた中島伸欣の新作『檻の中で』、第3回から『What is the true love?』『Road You Chose』『Road You Chose』『sinfonia eroica』『孤独の先に…』『未来への扉』『Finding Happiness』と毎回作品を出してきた草間華奈の『Life is…』、前回『The Seventh Position』を発表して振付者としての才能を印象付けた新進ジョン・ヒョンイルの新作『Two fethers』の4作品だった。

1本目は、ヒョンイルの『Two feathers』。『白鳥の湖』のメロディーをピアノで流し、白と黒の衣裳のダンサーたちにクラシックのステップを踊らせた。チャイコフスキーの感動的な主題を抽象的なダンスに仕立て直して、動き主体の舞台を出現させたのだ。最後にフォーキン振付の『瀕死の白鳥』まで、白と黒のデュエットに代えてしまい、抽象的なダンスの世界を観客に押し付けた。しかし「やはり元のままの方が…」という観客の想いを抑えきることはできなかった。そのような観客個々の心に葛藤を引き起こした白と黒のダンサーの動きが、ヒョンイルのねらい目だった。

草間の『Life is…』は、人生の折々にふと現れる美しいシーンを、好きな音楽を鳴らしてメモ書き風に並べた感じの舞台だった。繊細な感覚からにじみ出る何気ない動きの流れは美しい。しかしそれをひとひねりしたところに「作品」は現れる。メモ書きが作品になるまでには、もうしばらく待たなければならないようだ。

中島伸欣の『檻の中で』は、檻の中に閉じ込められている現代人の姿を描く。はじめに看守が消毒液を噴射するシーンがあり、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番を使い、囚われのいろいろな場面を見せる。最後にまた舞台両袖からの噴射があり、幕となる。全体の構成に無理がなく、動きの統一感が整っている上に、音楽の使い方もたくみだ。ダンサーがそろいの青い手袋をはめていて、牢獄の雰囲気を漂わせる衣裳の使い方もうまい。檻の中の人々にコロナ禍に悩む現代人の姿が重なって見えた。

石井の『ノスタルジー』は、過ぎ去った遠い日々の美しい思い出を描く舞台。彼女ならではの動きの流れの魅力が随所に感じられ、そこに安心して浸っていたいという気分にさせる。すでに東京シティ・バレエ団のレパートリーに入っており、今後も見る機会のある佳作。

《CITY BALLET SALON》も次回は10回目。これまでに登場した多くの作品の中から、バレエ団のレパートリーに残したいベストの数本を選び、改めて見せてもらいたいと思う。

(山野博大 2020/11/8 豊洲シビックセンターホール)

jpsplendor at 22:55舞台評短評

December 05, 2020


新国立劇場バレエ研修所の《バレエ・オータムコンサート2020》が行われ、研修所16、17期生、予科生が、新国立劇場バレエ団員のゲストに助けられて舞台を踏んだ。

オープニングにロマンティック・バレエの『ラ・シルフィード』第2幕よりを、そして最後にクラシック・バレエ『パキータ』のグラン・パを置き、その間に『シェヘラザード』のゾベイダとの奴隷のアダジオ、ボリス・アキモフと貝川鐡夫の今の時代の振付作品を配したプログラムは、若い研修生と観客にバレエの歴史の概略を教えるものだった。

シルフィードの服部由依、ジェームスの石井連が、森の妖精たちの優雅な集いを、パキータの吉田朱里、リュシアンの小柴富久修(ゲスト)が、フランス軍将校とそれを助けるジプシー女たちとのはなやかな出会いを踊り、研修の成果を示した。パキータを踊った吉田朱里の風格を感じさせる堂々たる身のこなし、『シェヘラザード』でゾベイダを踊った狩俣瑠風のしなやかな艶技が印象的だった。

ボリス・アキモフの『ボーイズ・アンシェヌマン』は男性4人の踊り。とかく女性中心になりがちのバレエの世界にあって、男たちもがんばっていることを見せるための一本だった。貝川の『ロマンス』は、女性6人の踊り。2016年11月の《Dance to the Future》の初演で、ショパンの曲を使い、さりげなく女性ダンサーの動きの流れの美しさを示した。

踊りの間に、映像による研修風景の紹介があった。ここでは、講師たちの熱心な働きが、研修生の成長に欠かせないものであることを知らされた。最後に第17期研修生が、それぞれ研修に臨む意気込みを語り、観客の応援の拍手のうちに《バレエ・オータムコンサート2020》は幕を下ろした。

(山野博大 2020/11/7 新国立劇場 中劇場)

jpsplendor at 23:27舞台評短評

December 02, 2020


小林和加枝ダンス展で、ていねいに仕上げられた現代舞踊の小品3本を見た。最初の『Energy』は、熊木梨乃の振付。高橋ゆかり、栗原理佐子、澤琴音と共に熊木が中心を踊った。彼女は小林門下。歯切れの良い動きが印象的な踊り手だ。その良さを芯に据え、踊りの楽しさをストレートに見せた佳品だった。
 
次の『こ木・こ木・こ木の…』は、小林和加枝が2011年のザ・ネリマ現代舞踊展で初演したもの。小林は、荻野陽子、荻野直子、武井良江に動くところをすっかり任せきり、武田晴子デザインの樹齢を経た大木を思わせる衣裳を身につけ、背を向けて中心に立ちつくす。タイトルの「こ木」のところに「古木」「枯木」「孤木」の漢字をあてはめると、これが深い森の景色であることがはっきりする。しかし小林は、そのあたりに何の細工も施さず、ひたすら老木を演じきった。
 
小林和加枝の師は、志賀美也子のところから巣立った塩穴みち子だ。塩穴は自分の世界にこもり、身辺の様子をこと細かに描くタイプの舞踊家だった。観客の理解を得ることにはあまりこだわらず、自分の詩の追求に専心したので「難解」と言われることが多かった。しかしひとたび、彼女の世界に引き込まれてしまうと、どこまでも奥へ奥へと共に進むことになる。小林は、塩穴のそのようなところを引き継いでいるのかもしれない。『こ木・こ木・こ木の…』は、ふとそんなことを思い起こさせる作品だった。明快な仕上がりの『Energy』の次に上演されたせいで、その創作の姿勢がいっそう強く印象付けられたような気がする。
 
最後は『一通の手紙』だった。小林和加枝の振付を中村友美門下のベテラン幕田晴美、小林門下の荻野陽子、荻野直子、高橋ゆかり、熊木梨乃の5人が踊った。それぞれのダンサーに個性を生かした動きを与え、五つのソロが同時に進行するような状態を作り上げ、そこに小さなドラマを潜ませた。ここに「難解」はなく、観客はしっかりと構成された踊りを見た満足感を胸に、晴れやかに家路につくことができた。

(山野博大 2020/11/6 川口総合文化センター リリア 催し広場)

jpsplendor at 21:55舞台評短評

November 29, 2020


山本裕が新作『Night Parade』で芸術祭に参加した。無線機の発するようなとぎれとぎれの無機的な音が響く中で踊りが始まる。ストーリーはなく、1時間を動きで埋めつくした。山本は、京都の水谷みつるのところから石井みどり・折田克子へと進み、今では現代舞踊界有数の男性ダンサーのひとり。彼がここで使った動きは新しい時代の中からにじみ出てきたものであると同時に、日本の現代舞踊が長い時間をかけて積み上げてきた歴史を感じさせた。山本は、石井漠の系統を超えて江口隆哉、芙二三枝子らのアーカイブ作品などでも主要パートを踊れる蓄積を持つダンサーだ。

有路蘭、飯塚友浩、近藤みどり、鈴木遼太、藤村港平、船木こころ、南帆乃佳、脇坂優海香を、まずたっぷり動かし、彼自身と船木こころがそれそれ主要パートを踊り、さらにデュエットになる。サキソフォンの即興的な演奏も加わり。激しい起伏を伴う作品の核心が出現した。『Night Parade』はていねいに動きを選び、それを地道に盛り上げて行くことで、今の時代そのものを舞台上に出現させた佳品だった。

(山野博大 2020/11/4 座・高円寺2)

jpsplendor at 17:00短評舞台評
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