March 26, 2011
日本のコンテンポラリーダンスの牽引者の一人、二見一幸。彼の主宰する「ダンスカンパニーカレイドスコープ」が活動開始15周年を記念し、公演を行う。自身も、振付家を志してから30年という節目の年を迎えた二見に、これまでの歩み、今回の公演の見どころを聞いた。
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節電のため、劇場へ通じるエスカレーターも停止している中、非常階段を昇って客席へ着くと、やはり空席のほうが目立つ。上演前、麿赤児によるアナウンスがあり、「われわれにできるのは、踊ることだけ。御魂振り、御魂鎮めのために踊るのみ」という趣旨が伝わると、思いを同じくした観客が大きくうなずく姿があった。
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東京でも地震による交通機関のマヒ、電力不足、余震への懸念などから多くの公演、イベントが中止、または延期になっている。多くの人が集う劇場では、その判断もやむを得まい。一方で、公演を予定通りに行っているカンパニー、劇場も少数ではあるが存在する。
スターダンサーズ・バレエ団は、地震翌日の3月12日(土)と13日(日)に、予定通り公演を催した。開演前に主催者から「苦渋の決断」であったことが観客に向けて直接語られた。様々な責任、リスクを承知の上で、しかし、誰かが始めなければならない、という厳しい選択であっただろう。筆者は13日(日)に見たが、客席は空席が目立った。しかし、家に篭っていても気がめいるばかりなので、思い切って出かけてきたと語る人もいたし、このようなときだからこそ、真摯に表現し、思いを伝えようとするダンサーたちの姿勢に、勇気付けられた人もいたようだ。
作品は、遠藤康行の振付による「love love Robot幸せのジャンキー」、佐藤万里絵による「Heaven Seven」、鈴木稔の振付による「幸福の王子」の三本である。遠藤作品は、小編成のライブ演奏を背景に、無機的な動きのロボット、何ものかにとらわれ、翻弄され易い人間の弱さ、醜さなどを対比的に描いた。ダイナミックなソロやデュオ、一斉に並んでの迫力あるユニゾンなどがあったが、少々詰め込みすぎ。焦点を絞ってシンプルにした方が、伝わりやすいのでは。佐藤は、初めての振付にしては上出来。独自のスタイルを探っていくのはこれからだが、身体の動きに応じた空間の配置、シーンのつなぎ方などにセンスが光るものがあり、これからが楽しみだ。鈴木作品は、オスカー・ワイルドの原作を元にした物語バレエ。『ドラゴン・クエスト』や『シンデレラ』で見せたように、鈴木は、エンターテインメント性と現代性、叙情やファンタジーを振付、演出に巧みに盛り込んで、奥行きのある物語を伝えることができる振付家。ショパンのピアノ曲を効果的に用いた、王子(大野大輔)の象徴的な身振り、ツバメ(福原大介)の軽やかさが印象的だが、ツバメは、むしろ優雅過ぎるくらい。三作品とも、ダンサーはみな初演と現在の状況というプレッシャーをはねのけて、集中力と緊張感を維持しながら、しっかりとしたバレエの技術に基づく明確な踊りを見せた。公演開催を決断し、成功させた関係者すべてに拍手を送りたい。(稲田奈緒美 2011/3/13 14:00 @ゆうぽうと)